米国の地方紙において、非営利組織(NPO)による経営が広がりを見せている。広告収入の減少など厳しい経営環境が続く中、持続可能な形で地域ニュースを伝えるモデルとして注目を集めている。
ピッツバーグ・ポスト・ガゼット、NPO傘下に
東部ペンシルベニア州の地方紙「ピッツバーグ・ポスト・ガゼット」は5月から、経営母体がNPOのベネトゥリス機構に移った。同紙は長年にわたる経営不振や所有する一族の内紛、労働争議などに悩まされ、1月には「廃刊する」と表明していた。米国の主要都市で地方紙が完全に消える可能性が浮上していたが、ベネトゥリス機構が受け継ぐことで当面の存続が決まった。
ベネトゥリス機構の設立背景
ベネトゥリス機構は、地方ニュースを存続させるための機関として2021年にメリーランド州ボルティモアで設立された。創設者はホテルチェーンの経営で財を成し、機構に私財を投じた。当初は地元の地方紙買収も検討したが困難と判断し、デジタルメディア「ボルティモア・バナー」を2022年に立ち上げ運営してきた。
ボルティモア・バナーは2025年までに一定の成功を収め、そのモデルを他地域に拡大する動きが出ている。ピッツバーグ・ポスト・ガゼットの買収はその一環であり、NPOによる地方紙経営の新たな試金石となる。
NPO経営のメリットと課題
NPOによる経営は、利益追求ではなく地域への情報提供を目的とするため、広告主や株主の圧力から解放される利点がある。また、寄付や助成金を活用することで、購読料収入だけに依存しない安定した運営が可能となる。一方で、収益性が低い場合、長期的な資金確保が課題となる。
米国では地方紙の廃刊が相次ぎ、ニュース砂漠と呼ばれる地域が拡大している。こうした中、NPOモデルは地域ニュースを維持する有効な手段として期待されている。しかし、すべての地方紙がNPO化できるわけではなく、成功には地域コミュニティの支援や質の高いジャーナリズムの提供が不可欠だ。
今後の展望
ピッツバーグ・ポスト・ガゼットの事例は、他の地方紙にも影響を与える可能性がある。ベネトゥリス機構は今後、さらに複数の地方紙を買収し、NPOネットワークを構築する計画だ。持続可能な地域ニュースのモデルとして、NPO経営がどの程度普及するか、注目が集まっている。



