横引シャッター社長・市川慎次郎氏「好きな仲間と楽しく働き、みんなで豊かになる」
横引シャッター社長・市川慎次郎氏「好きな仲間と楽しく働き、みんなで豊かになる」

「好きな仲間と楽しく働き、みんなで豊かになる」――横引シャッター社長・市川慎次郎氏

シャッターと聞くと、垂直に上げ下げするタイプを思い浮かべる人が多いだろう。しかし、株式会社横引シャッターが製造するのは、文字通り横にスライドするシャッターだ。駅の売店や百貨店、病院などで採用され、業界トップクラスのシェアを誇る。

社長の市川慎次郎氏は、経営の苦労を経て「好きな仲間と楽しく働き、みんなで豊かになる」という格言にたどり着いた。一見平凡に聞こえるが、紆余曲折の末に至った境地だという。

父の背中と社訓

足立区に本社を構える同社は、先代の父・文胤氏が創業。開発した横引きシャッターが大ヒットした。市川氏は大学卒業後、父のカバン持ちや運転手、雑用係として経営哲学を学んだ。

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父が残した社訓は「商売は欲益を求めて商売ならず人喜んでこそ商売なり」。昭和の「お客様は神様」時代を体現し、利益を度外視した仕事も引き受けた。親分肌で、社員の給与を銀行からの借金で支給したこともあったという。

9億円の負債との闘い

入社当初から会社の資金難を感じていた市川氏。経理を担当すると、給与遅配1億円、支払先への未払い、税金滞納、銀行借入を含め総額9億円の負債が判明した。そこから工場内の節電など小さな経費削減を徹底し、6年間で7億円を返済。2011年に父が虚血性心不全で急逝後、残り2億円を社長就任後に完済した。

混乱からの再建

父の死後、会社は役員らによる計画倒産の画策などで混乱し、86人の社員が11人に激減。契約書類が破棄され、顧客からクレームが殺到し、おわび行脚の日々が続いた。残った社員は過重労働を強いられたが、心ある社員に「会社がこうなったのはあなたのせいじゃない」と励まされ救われた。

父の信念と現実

「欲を出して金だけを求めるのは商売ではない。人を幸せにするのが商売だ」という父の信念は今も胸にある。しかし、それだけでは経営は成り立たないと痛感した。「会社は営利組織。きれい事だけでは食べていけない。利益がなければ社員の福利厚生もままならず、倒産すれば路頭に迷わせる。だから正々堂々と収益を上げ、社員に還元する。仲間と楽しく働くことは意欲向上につながる」と語る。

定年なしのユニークな職場

同社には定年制度がなく、78歳の新入社員や94歳で亡くなるまで働いた社員もいる。「つらいことはあるが、信頼できる家族のような仲間と支え合って乗り越えられる。これからもそんな会社でありたい」と市川氏は語る。

横引きシャッターは、頑丈な設計や操作性の高さが評価され、2025年度にグッドデザイン賞を受賞。市川氏は1976年埼玉県八潮市生まれ。高校卒業後、中国に留学し北京語言文化大学を卒業。24歳で父の会社に入社し、総務部長や経理部長を歴任。6年間で借金7億円を返済し経営を立て直した。2011年の父急逝後、親族間の混乱を経て2012年に社長就任、無借金経営を実現した。

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