NISA口座開設率に都道府県格差 業種構成や年齢が影響、金融教育の重要性浮き彫りに
NISA口座開設率に都道府県格差 業種・年齢が影響 (10.04.2026)

NISA口座開設率に顕著な地域格差 業種構成や年齢が影響

政府が普及を推進する少額投資非課税制度(NISA)の口座開設数は、昨年12月末時点で2826万口座に達しました。対象人口の約4分の1に相当する数字ですが、都道府県別の開設率には大きな差が生じています。東京や神奈川では30%前後に上る一方、岩手県は15.8%、青森県は15.0%と半分程度の水準にとどまっています。インターネットで証券口座が手軽に開設できる現代において、なぜこのような格差が生まれているのでしょうか。

セミナー開催の地域差が開設率に影響

今月7日、東京都渋谷区のSBIマネープラザでは「今からでも遅くない資産運用」と題したセミナーが開催されました。主に50~70歳代の投資初心者を対象に、講師がNISAの仕組みや長所について詳しく説明しました。同社は今月、都内で渋谷4回、新宿10回、福岡市でも2回同じセミナーを開催する予定です。

講師を務めた小竹柊さん(24)は「対面での説明を通じてNISAに関心を持っていただき、口座開設につながっているのではないか」とその意義を強調します。このようなセミナーは首都圏では証券・銀行関連各社が盛んに開催していますが、東北や九州などでは開催箇所や頻度が少なくなる傾向があります。

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業種構成の違いが開設率に大きく影響

野村総合研究所金融イノベーション研究部の金子久氏は、2025年6月時点の統計に基づき47都道府県別の口座開設率を試算しました。開設率が高かったのは東京(1位)、神奈川(2位)、兵庫(4位)、千葉(6位)、大阪(7位)など、関東と関西圏が目立ちます。一方、北海道と東北6県、佐賀、沖縄、宮崎、大分、鹿児島の九州各県はいずれも35位以下にとどまりました。

金子氏は、業種構成の違いが顕著な差として表れたと分析します。勤務先の業種を「小売り・一般サービス」「製造・建設」「対人支援・生活サービス」など7つに分類し、構成比が1%高くなった場合の開設率変化を調べたところ、「金融・不動産」は0.98ポイント、「IT・教育・インフラ」は0.38ポイントそれぞれ上昇したのに対し、「運輸・1次産業」は0.68ポイント、「公務部門」は0.61ポイントそれぞれ低下しました。

「職業によってデジタル知識の多少が影響したと考えられます。公務部門は個人型確定拠出年金(iDeCo)などNISAと競合する制度があるからでしょう」と金子氏は指摘します。北海道や東北、九州は都市部に比べて「運輸・1次産業」の割合が高く、東京と青森で2倍の格差が生じる原因の多くは「どのような仕事に就いている人が多いかで説明がつく」としています。

年齢構成と年収も開設率に影響

年齢構成でも影響が確認されました。年収と業種構成が同じという条件下では、20歳代に比べて30歳代の口座開設率は8.5ポイント、40歳代は4.7ポイントそれぞれ高くなりました。年収についても、業種構成と年齢が同じ場合、平均年収が100万円多い地域の方が口座開設率は1.5ポイント高かったことが統計的に裏付けられました。

ただし、年齢構成の違いに比べれば年収の押し上げ効果は限定的だったと金子氏は説明します。現在、NISAの普及を先導しているのは30~40歳代という年齢固有の資金需要や投資意欲であることが強く示唆されています。

休眠口座の課題と金融教育の重要性

NISA口座を開設しても金融商品の取引に利用していないケースも少なくありません。マネックス証券によると、同社に開設されているNISA口座のうち、2025年12月時点で3割以上が金融商品を売買したことがない「未稼働」の口座でした。3人に1人は取引をしない「休眠状態」となっており、活用をどう働きかけていくかも課題です。

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金子氏は「口座開設をさらに底上げするためには、業種による差をなくしていく取り組みが必要です。とりわけ職場における金融教育が大切です」と強調します。学校での金融教育と同様、あるいはそれ以上に重要といえるでしょう。

「まずは自分にとって運用が必要かを考え、一度に数百万円を投じるのではなく、自分の財布がそんなに痛まない数万円程度といった範囲で始めてみればいいのです。座学だけでは金融リテラシーは高まらず、実際にやってみることが大切です」とアドバイスしています。

地域固有の特性も開設率に影響

年齢構成、業種構成、平均年収の3点でも説明がつかない要因もあります。9位の徳島(25.6%)、17位の鳥取(24.0%)、22位の長崎(23.0%)は、年齢構成や業種構成に照らした場合、本来はもう少し低い数値になってもおかしくないという分析結果が出ています。

口座開設率が比較的高い理由としては、積極的に取り組む地元の金融機関があるといった「地域固有の特性」が考えられます。金子氏によると、長崎県は証券会社で開設される口座数よりも銀行で開設される口座数の方が多く、47都道府県の中で珍しい例だといいます。インターネット証券を利用していない高齢者らに、銀行の窓口でNISAを勧め、口座開設に結びつけたとの想像ができます。

政府目標と今後の課題

NISAは2014年に導入され、2024年1月に新NISAが始まりました。来年には0~17歳を対象にした「こどもNISA」が始まり、65歳以上が対象の「プラチナNISA」も検討されています。この1年のNISAの口座開設数は10%近い増加となり、2027年末までに買い付け額を56兆円とする目標は2025年3月に前倒しで達成しました。

しかし、2027年末に総口座数を3400万にする目標は依然として未達となっています。自民党の資産運用立国議員連盟が今月上旬に開いた総会で、岸田文雄元首相は「NISAの地域間格差の問題をぜひ取り上げてもらいたい」と強い危機感を示しました。

3400万口座の達成に向け、北海道や東北、九州を中心に未開設の割合が高い地域での底上げが欠かせません。金子氏は「都道府県ごとの『資産形成文化』の違いを尊重し、各地域の金融機関や自治体が職場、対面、家族といった特性にあったチャネルでアプローチすることが鍵となる」と指摘しています。