EV価格、補助金でハイブリッド車より安く 軽自動車が普及の鍵に
EV価格、補助金でハイブリッドより安く 軽が普及の鍵 (16.02.2026)

EV価格、補助金でハイブリッド車を下回る 軽自動車が普及の本命に

中国や欧州と比較して、日本における電気自動車(EV)の普及は依然として低迷している。自動車ユーザーに利便性が十分に認知されていないことが一因とされる。みずほ銀行の浜田耕平シニアアナリストは、軽自動車がEVシフトを牽引する可能性を指摘し、車載電池の価格下落について解説した。

各国のEV普及状況と日本の現状

EV化をリードするのは中国で、新車販売台数の約3割を電気のみで走行する車が占め、プラグインハイブリッド車(PHV)やハイブリッド車(HV)を上回っている。中国政府の買い替え促進策が販売を後押ししている。欧州では、ドイツ、フランス、英国、イタリアの4か国で新車販売台数の約16%がEVとなっており、価格高止まりや補助金縮小による一時的な落ち込みから、既存モデルの値下げにより普及が再加速する兆しが見られる。

一方、米国では新車販売台数の約10%がEVで、トランプ政権による燃費規制の見直しやEV税額控除の見直しにより、普及が逆風に直面している。中長期的にはEVシフトが進むものの、普及時期が後ずれする可能性がある。

日本では新車販売台数に占めるEVの割合が約1%と、中国、欧州、米国に比べて低調だ。KPMGジャパンの調査によれば、今後5年以内に購入を検討する車の動力タイプとして、2023年11月にバッテリー式EV(BEV)は13%だったが、2025年8月には3%に低下。エンジン車(77%)、HV(30%)、PHV(5%)よりも低い水準となっている。充電インフラの問題は懸念が薄れつつあるが、購入価格や航続距離が主要な課題として挙げられる。

補助金増額でEV価格が低下

2026年1月から、政府はBEVなどの購入時の補助金を上積みした。車両性能や安全性に応じて配点される仕組みで、上限額は車両価格の2割程度に見直され、EVの補助上限額は90万円から130万円に増加。日米関税交渉の合意に基づき、公平性が考慮され、EVとPHVは補助額が増え、燃料電池車(FCV)は減少した。

これにより、トヨタ自動車のEV「bZ4X」(ベースグレード)は300万円台となり、HVのRAV4(450万円)よりも安価に。EVは補助金を考慮すれば、エンジン車やHVと同等の価格帯になっている。

軽自動車を中心としたEV普及の可能性

軽自動車を中心にEVシフトが進む可能性が高い。短距離利用が多く、自宅での充電が可能であれば、充電インフラの問題が軽減され、大型の車載電池が不要となるため、車両価格も抑えられる。日産自動車の軽EV「サクラ」は航続距離180キロで、電池容量は20キロ・ワット時に抑えられている。三菱自動車も同様のアプローチを取っており、ホンダは2025年に軽EV「N-ONE e:」を発売し、車種が増加している。

中国のBYDは2026年夏に日本で軽EVを発売予定で、安さを強みとして注目される見込みだ。ただし、BYDの軽EVが大きな市場占有率を獲得するかについては懐疑的な見方もある。自動車販売店のネットワークや購入後のサポートサービスでは、日本の自動車メーカーのブランド力が優位であり、過去に韓国現代自動車が日本で販売を伸ばせなかった経緯も参考になる。

車載電池のコスト低下と将来展望

EVの価格は補助金を除いても低下基調にあり、HVやエンジン車との価格差は縮小している。車載電池の価格下落が影響しており、モデル数が増加し、メーカー側のコストも低下している。車載用リチウムイオン電池の価格は、2013年に平均で1キロ・ワット時あたり約800ドルだったが、2025年には約100ドルと8分の1に低下した。生産量の増加により価格が下がったものの、原材料費が約8割を占めるため、さらなる価格低下の余地は限られている。

大手自動車メーカーは2020年代後半に全固体電池を搭載した次世代型EVを投入する方針だが、初期投入は少数台数に留まり、大規模量産は2030年代半ば頃と見込まれる。当面は液系リチウムイオン電池の価格に与える影響は限定的だろう。

電池の価格が下がる余地が少ない中、EV普及見通しは慎重だ。EVの車両価格を大幅に引き下げる要因はないが、補助金増額により価格競争力が向上し、2026年はEVがやや増加する年になると予想される。中長期的には軽EVを中心に徐々に普及していく可能性があるが、大きく増加することは現実的ではない。

欧州のEVシフトと今後の動向

2024年、欧州のEV戦略の要として期待されたスウェーデンの電池メーカー「ノースボルト」が破産した。ノースボルトは欧州に電池のサプライチェーンを構築するため、中国から設備を購入して生産体制を整えたが、生産技術を持つ人材が不足し、競争力のある電池を作れなかった。ドイツの自動車メーカーが発注をキャンセルしたことが破産の要因となった。

欧州連合(EU)は2025年12月、ガソリンなどを燃料とするエンジン車の販売を2035年に禁止する方針を見直すと発表したが、方向転換ではない。元々は車の走行時の二酸化炭素排出量を2035年までに2021年比で100%削減する規制だったが、90%削減に緩和されただけだ。新車販売のほとんどをEVにしなければならない方針は変わっておらず、厳しい環境規制を維持している。EUは世界のEVシフトを主導し、欧州系自動車メーカーがEV領域で競争力を高める狙いがある。中国のEVメーカーの台頭により一部軌道修正を余儀なくされたが、EVによる競争方針は堅持されている。