ラーメン業界で「1000円の壁」が崩壊、外食チェーンが事業強化を加速
かつて「デフレの象徴」とされた牛丼とは対照的に、ラーメン業界では「1000円の壁」が崩れつつある。都市部では1000円台のラーメンが珍しくなくなり、価格転嫁がしやすい環境が整っている。これに目をつけた吉野家ホールディングスや松屋フーズホールディングスなどの大手外食チェーンが、ラーメン事業の強化に乗り出している。背景には、原材料価格の安定や市場成長の余地があることが挙げられる。
大手チェーンのラーメン事業拡大戦略
吉野家ホールディングスは、中期経営計画で「ラーメン提供食数世界ナンバー1構想」を掲げ、国内外で500店舗、売上高400億円を目指している。同社は神仙やせたが屋などのラーメン店を買収し、国内外125店舗を展開。牛丼店と店舗サイズが近く、運営ノウハウや人材を活用できる点を強みとしている。
松屋フーズホールディングスも、つけ麺「六厘舎」や「舎鈴」の運営会社を買収し、新業態「松太郎」を開業。ラーメン店を約130店舗に拡大させた。これらの動きは、ラーメン市場が個人経営や小中チェーンが多い業界で、大手の参入余地が大きいことを示している。
原材料価格の安定と利益率の高さが商機
ラーメン事業が注目される理由の一つは、原材料価格の安定だ。ロシアがウクライナを侵略した2022年を除き、小麦の国際価格は比較的安定している。一方、牛丼は低価格の印象が強く、原材料が高騰しても大幅な値上げが難しい。ラーメンは価格転嫁がしやすいため、利益率が高いとされる。
丼チェーン「伝説のすた丼屋」を展開するアントワークスは、新業態「伝説の肉そば屋」を開業し、1杯の費用を丼より100~150円抑えている。同社広報は「ラーメンは利益率が高く、丼に次ぐ主要ブランドに育てたい」と語る。
市場拡大と海外展開の動き
帝国データバンクによると、ラーメン店の国内市場は2024年度に7900億円と、10年間で約1.5倍に拡大した。しかし、高いシェアを持つ大手は少なく、買収を通じた参入が相次いでいる。レコフデータの調査では、2025年に成立した国内ラーメン店の買収は21件と過去最多だった。
海外展開も進んでおり、定食店「やよい軒」を展開するプレナスは、ラーメン店「KAYAVA.」で米国シアトルに進出。ニューヨークなどと比べ競合が少ないシアトルを中心に、店舗拡大を図っている。国内でノウハウを蓄積し、人材を育成する狙いだ。
専門家の見解と今後の展望
第一ライフ資産運用経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、「ラーメンで客足が遠のくとされる『1000円の壁』が崩れ、独自の調達網を持ち、コスト競争力が高い大手が、買収などを通じてラーメン事業を拡大する動きは今後も強まる可能性がある」と指摘する。市場の成長と価格転嫁のしやすさが、外食チェーンにとって大きな商機となっている。



