実在しない住所が舞台のホラー小説「三重県津市西区平山町3-15-7」が大ヒット 直木賞超えの売れ行き
実在しない住所舞台のホラー小説が大ヒット 直木賞超えの売れ行き

実在しない住所が生む恐怖 津市舞台のホラー小説が異例のヒット

三重県津市を舞台にしたホラー小説「三重県津市西区平山町3-15-7」(大舟著・KADOKAWA)が大きな話題を呼んでいる。今年1月の発売直後に重版が決定し、すでに3刷も決定するなど、売れ行きが好調だ。地元の津市でも注目が高まっており、市内の書店員は「直木賞よりも売れている」と驚きを隠さない状況が続いている。

実在しない「西区」と「平山町」が物語の鍵に

作品のタイトルである「三重県津市西区平山町3-15-7」は、実在しない住所だ。津市には「西区」も「平山町」も存在しない。物語は、インターネットの検索履歴などに、いつの間にかこの文字列が表示される不可解な現象をめぐり、ある作家が謎を解明していく過程を描いている。

作中には美杉村(現・津市美杉町)や県道15号、JR名松線など実在する地名や路線も登場し、現実と虚構が巧みに交錯する構成が特徴となっている。この現実感のある設定が、読者に強い没入感を与えているようだ。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

ウェブ発の成功ストーリー コミカライズも決定

この作品は、KADOKAWAが運営する無料のウェブ小説サイト「カクヨム」で公開され、同サイトのコンテストでホラー部門大賞とコミカライズ賞を受賞した。今年1月に書籍化され、すでに漫画化も決定。6月にはコミックの発売が予定されている。

カクヨムのレビューでは「読後、思わず地図を開きたくなる」「怖いのに気になってどんどん読む手が止まりません」など、恐怖と面白さを同時に感じさせる感想が相次いでいる。

地元書店では直木賞作品を上回る売れ行き

作品の舞台となった津市では、好調な売れ行きが続いている。市内の別所書店修成店は、レジ前に特設コーナーを設置。店によると、1月に芥川・直木賞の発表があり話題作が並ぶ中、「津市西区」は2月と3月の文芸書売り上げで2カ月連続1位を記録した。

ホラー系の読者は若年層が中心とされるが、同作は幅広い年代から支持を集めている。店員の松葉幸恵さん(42)は「タイトルに興味を持って手に取る人が多い。舞台が津市ということもあり、地元の方はより没入感が楽しめると思う」と話す。

著者が明かす舞台選定の理由

著者の大舟さんは、取材に書面で回答し、舞台に津市を選んだ理由を明らかにした。プロフィールは非公開だが、自身は津市にゆかりはないという。関西周辺で作品の舞台を検討する中で、市街地から広大な山間部まで広がる津市の地理的特性が物語の展開に適していると判断した。

「津市にお住まいの皆さんは非常に温厚そうなイメージがあり、怪談の舞台に設定しても許していただけるかなと思ったのが、正直な理由です…(笑)」とも説明している。

モキュメンタリーホラーの人気背景

「三重県津市西区平山町3-15-7」は、フィクションをドキュメンタリーのように見せる「モキュメンタリー」と呼ばれる手法で描かれている。近年、このジャンルのホラーが人気で、作品数も増加傾向にある。

ブームのきっかけは、2023年刊行の「近畿地方のある場所について」(背筋著・KADOKAWA)だ。ウェブで発表後書籍化され、「このホラーがすごい!」24年版で1位を獲得。25年夏には原作映画も公開され、ヒットした。

「津市西区」の編集者は「日ごろ目にする何げない文章の中に紛れ込む、どこかにありそうな恐怖が積み重なり、やがてより現実的な恐怖として身近に迫ってくる」と作品の魅力を語っている。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ

著者の大舟さんは「もしこの住所の謎を知りたくなられましたら、ぜひ一冊手に取っていただけるとうれしいです」と読者へのメッセージを寄せている。