Adoの半生を描いた自伝的小説『ビバリウム Adoと私』が刊行
コロナ禍の重く暗い空気を打ち破るかのように、『うっせぇわ』が日本中を駆け抜けたのは5年前のことです。その後も、ワンピースの映画で人気キャラクター・ウタの歌唱を担当し、ワールドツアーを実施するなど、Adoの活躍はとどまるところを知りません。振り返ってみれば、Adoはデビュー当初から、ユニークで完成度の高い歌い手として注目を集めてきました。しかし、私たちは彼女の実際の姿をほとんど知らないままでした。
Adoの軌跡をたどる自伝的小説
本書『ビバリウム Adoと私』は、Adoの軌跡をたどりつつ、作中では沢木アオという名で、彼女自身を幼少期から描いた自伝的小説です。浜崎あゆみをモデルにした『M 愛すべき人がいて』などで知られるノンフィクション作家・小松成美が、アオの心情の変化を克明に描き出しています。
Adoは、アオの内にある『理想の歌い手』として描かれています。アオが試行錯誤の末に練り上げ、周囲の大人たちが周到に準備を重ねて、一人の歌い手として結実した存在です。その過程からは、圧倒されるほどの熱量と情熱を感じることができます。
アオの内面と苦悩
一方で、アオは『自分が嫌いだ』とまで思い詰める一人の人間でもあります。彼女の両親はいわゆる『理解ある親』で、普通であることを押し付けず、自由を尊重し、不登校にも目くじらは立てません。しかし、不仲になっていく両親の姿を目の当たりにするなかで、アオはそれを自分のせいだと受け止め、深い罪悪感に苦しんでいきます。
一人の親として、このくだりは非常に重いものです。親が暴力などで子を押さえつければ、親は容易に悪役になります。しかし、『理解ある親』は責めにくい存在です。そのため、子が自分に責任を感じ、自己肯定感を大きく損ねてしまう可能性があります。しかし、Adoという存在が、アオに前を向く勇気を与えていくのです。
理想と現実の融合
この物語は、理想のAdoと現実のアオという二つの人格が、一つに重なり合っていく過程を描いたものです。もう彼女は、『謎の歌い手』ではありません。私たちはようやく、Adoの内面と成長の軌跡を知ることができたのです。
本書は、Adoのファンだけでなく、芸能界の内側や人間の成長過程に興味を持つ読者にもおすすめです。価格は1870円で、KADOKAWAから刊行されています。



