スモーキングルーム第197回:ジャム瓶と金ボタンの吹雪の夜の物語
スモーキングルーム第197回:ジャム瓶と金ボタンの吹雪の夜 (09.04.2026)

スモーキングルーム第197回:吹雪の夜に紡がれるホテルの物語

吹雪が激しく降りしきる夜、ホテルの厨房では「ジャム瓶」と「金ボタン」が声を交わしていた。ジャム瓶は金ボタンに、空いている客室「天使の部屋」を使うよう勧める。「今夜は冷える。空いている客室を使ったらどうだ。この吹雪だ、今夜はもう埋まることはない」と優しく声をかけた。

しかし、ジャム瓶は階段を上るのを嫌がり、「いま下っているのに、また階段を上れっていうのかい」と返す。金ボタンが「昇降機を使えばいい」と提案すると、「あたしは荷物じゃないんだ、あんなものは御免だね!」と頑なに拒否した。

天使の部屋とジャム瓶の思い出

「天使の部屋」は、屋敷時代には唯一の子供部屋として使われ、乳母だったジャム瓶はその部屋で寝食をしていた。ホテルになってからは、ほとんど入ることもなく、ジャム瓶は地下の粗末な小部屋を好んでいた。彼女の至福の時間は、貯蔵室の棚に並ぶ自分で作った砂糖煮の瓶詰めを眺めることだった。

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ガラス瓶の中で眠る果実や花、ハーブを見つめているうちに、自分もとろとろと眠りに誘われる。その蜜のような眠りは、ジャム瓶にとって安心できるものだった。吹雪が弱まった頃合いを見計らって、女性従業員たちに「娘っ子たち、吹雪が弱まった頃合いで帰りな!片付けは金ボタンと煙がやってくれるだろうさ!」と声をかける。

厨房での温かい交流

女性従業員たちの明るい声が「はーい」「おやすみなさい、女主人」と厨房に響き、ジャム瓶の姿が螺旋階段に吸い込まれた。金ボタンが「女主人って呼んでるのか」と口笛を吹くと、大きすぎる厨房服の袖をまくりあげた女性が「それは怒らないのよ」と笑った。金ボタンは、ああ見えて煙を育てた人だもんな、と思い、ジャム瓶はなんだかんだ面倒見が良いのだろうと感じた。

金ボタンは螺旋階段の方を窺いながら、殻つきの胡桃を二個ほどポケットに突っ込んだ。ジャム瓶に見られると「あのろくでもない鴉にかい」と罵られるので、ジャム瓶がいない隙にこそこそと栄養のありそうなものをくすねているのだ。

鴉の襟巻きと変化する日常

ジャム瓶は生き返ったようになったが、鴉の襟巻きはすっかり老いた。羽毛はぱさつき、雪の日は金ボタンが使っている屋根裏部屋で目を閉じてじっとしているようになった。金ボタンは「さあ、さっさと片付けちまおう」と厨房に声をかけ、白い布巾で皿を拭きはじめた。

この吹雪の夜、ホテルでは静かだが温かい時間が流れていた。ジャム瓶の砂糖煮の瓶詰めへの愛着、金ボタンのこっそりとした行動、鴉の襟巻きの老いなど、小さな日常が紡がれる物語だ。

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