任侠電器第16回:車内の会話が描く組織と家族の狭間
今野敏による連載小説「任侠電器」の第16回が公開された。物語は、車に戻った稔と阿岐本の会話から始まる。稔が「どこへ行きましょう?」と尋ねると、阿岐本は「事務所に戻るぞ」と答える。車が走り出す中、二人の対話は深まっていく。
電器屋経営の見直しと組織の現実
阿岐本は「仕入れ、営業努力、顧客管理、そうしたすべての面での見直しか……」と呟く。日村が聞き返すと、阿岐本は「昇さんがそう言ってただろう。店のことを見直すって……」と応じる。日村は「そうでしたね」と同意するが、阿岐本は「おめえ、どう思う?」とさらに問いかける。
日村は「どうもこうもありません。あのオヤジさんは、俺たちの相手なんかしてくれそうにありませんね」と率直な意見を述べる。阿岐本が「手を引けってことか?」と確認すると、日村は「電器屋などお門違いだって、代表もおっしゃっていたでしょう」と返答する。
ヤクザ組織における親子関係の複雑さ
阿岐本は「他に人がいないんだから、俺のことを代表なんて呼ばなくていい。オヤジでいいよ」と語る。日村が「はあ……。あの電器屋の社長もオヤジと呼ばれていましたね」と応じると、阿岐本は「昇さんが実子だからな……」と説明する。
日村は「素人なんだから、実子は変でしょう」と疑問を呈する。ここで、ヤクザ組織における独特の親子関係が明らかになる。稼業上の親子関係が存在するため、実際の子供は「実子」と呼んで区別する慣習があるのだ。
この会話は、電器屋経営の見直しという表面的な話題から、ヤクザ組織の内部構造と家族関係の深層にまで及んでいる。今野敏は、ビジネスと暴力団の世界が交錯する中で、人間関係の本質を鋭く描き出している。



