プロ野球・西武ライオンズの栗山巧選手が、ベンチで座る定位置は決まっている。ホームから遠い側の端っこだ。しかし、試合が終盤を迎えるころには、そこにいない。
「徐々に真ん中にいくんですよ。深い意味ないですけどね」と栗山選手は語る。現在の役割は代打。試合の進行とともに少しずつ席を移動し、出番が近づくとベンチの真ん中の通路を抜けて裏の素振りスペースに向かうという。1試合に1打席あるかないかの出番に向けて、集中力を研ぎ澄ますルーティンのようだ。
西武一筋42歳の栗山選手は、2008年、2018年、2019年のリーグ優勝も、2024年の球団ワースト91敗も、すべて経験してきた。その間に積み上げた安打数は2000本を超えている。昨年11月には、2026年シーズン限りでの引退を公表した。
最後の1年に何を残したいのか。栗山選手は「後輩たちに、ああいうふうにやれば結果が出るんだ、という姿を見せたい」と語る。代打としての役割に徹しながらも、若手選手への影響を強く意識している。
実際、栗山選手がベンチにいる1カ月間、西武は浮上傾向にある。チームの雰囲気が変わり、若手選手が積極的にプレーする姿が見られる。ある若手選手は「栗山さんがいるだけで安心感がある。背中で引っ張ってくれる」と話す。
栗山選手自身は「自分ができることは限られているけど、チームの勝利に貢献したい。それが後輩たちへのメッセージになる」と静かに語る。ラストイヤーに向け、彼の存在感はますます大きくなっている。



