長距離ランニングシューズの消耗を科学的に解明 日本文理大学が研究を推進
長距離走選手が着用するランニングシューズの消耗具合や、適切な買い替え時期を科学的に分析する画期的な研究が、日本文理大学(大分市)工学部の穂刈一樹准教授(機械工学)を中心としたチームによって進められています。この研究は、靴を原因とするけがや障害を効果的に予防することを目的としており、今年度中に研究成果をまとめる予定です。
主観的判断から科学的アプローチへ
穂刈准教授によれば、一般的に長距離走選手がランニングシューズを買い替える際の判断は、「靴の反発力が低下した」や「クッション感がなくなった」といった主観的な感覚に依存することが多いと指摘しています。こうした状況を改善するため、研究チームは客観的で科学的なデータに基づく評価方法の確立を目指しています。
陸上競技部選手の全面的な協力
この研究には、同大学の陸上競技部に所属する長距離走専門の選手たちが全面的に協力しています。具体的な手法としては、まず使い始める前の靴をコンピューター断層撮影法(CT)で撮影し、詳細な3Dモデルを作成します。その後、靴の断面形状や面積を左右それぞれ複数箇所で確認し、一定の走行距離ごとに撮影を繰り返すことで、経時的な変化を精密に計測しています。
さらに、各撮影機会において選手たちに「クッション感」や「安定感」などに関する質問に答えてもらい、これらの主観的な感覚と客観的な計測データとの相関関係を詳細に調査しています。これにより、選手の体感と実際の靴の状態との関連性を明らかにすることが可能となります。
予備実験で明らかになった重要な知見
2024年度には、陸上競技部の2人の選手の協力を得て、走行距離400キロごとに合計1600キロまでを対象とした予備実験を実施しました。この実験から得られた結果は非常に興味深いものでした。
具体的には、走行距離が800キロに達するまでは、靴底部の断面積が顕著に変化することが確認されました。しかし、800キロを超えるとその変化は小さくなり、靴の変形がある一定の距離で限界に達することが判明しました。また、断面積が減少するほど、選手が感じるクッション感や快適性が低下する傾向も明らかになりました。
新たな実験でさらなる詳細を追求
昨年8月から開始された新たな実験では、より細かな変化の推移を解明するため、6人の選手の協力を得て、走行距離300キロごとに合計1200キロまでを対象とした撮影を計画しています。この実験では、従来の手法に加えて、靴内部にセンサーを設置して圧力分布を計測したり、走行中の足の接地パターンを撮影したりするなど、多角的なアプローチを採用しています。
これらの追加的な計測により、各選手の個別の走り方が靴の消耗にどのような影響を及ぼすのかを詳細に分析することが可能となります。さらに、選手が感じる「クッション感」などの主観的な感覚の根拠を明確にするため、靴自体の衝撃吸収能力や反発力の経時変化についても調査を進めています。
この研究が完成すれば、長距離走選手がより安全かつ効率的にトレーニングを継続できる環境の整備に大きく貢献することが期待されます。科学的データに基づく適切な買い替え時期の判断基準が確立されることで、けがのリスクを軽減し、選手のパフォーマンス向上にもつながる可能性を秘めています。



