賃上げ格差是正が焦点、中小企業の実質賃金改善へ春闘始まる
賃上げ格差是正が焦点、中小企業の実質賃金改善へ

実質賃金の改善が急務、春闘で賃上げ格差是正へ

多くの人々が生活の質の向上を実感できるよう、より高い水準での賃上げ実現が求められている。厚生労働省が発表した2025年平均の毎月勤労統計調査(従業員5人以上の事業所)によると、名目賃金に相当する現金給与総額は前年比2.3%増加し、5年連続のプラスを記録した。伸び率が2年連続で2%を超えるのは、実に33年ぶりのことである。

しかし、物価の上昇分を差し引いた1人当たりの実質賃金は、前年比1.3%減少した。実質賃金は4年連続のマイナスとなっており、収入が増加しても、物価上昇がそれを上回っている状況が続いている。

物価上昇の要因と家計への影響

物価を引き上げている主な要因は、生鮮食品を除くコメなどの食料品である。家計に占める食費の割合が高い低所得層ほど、家計のやりくりに苦労しており、支出の工夫だけでは限界がある。暮らしを改善するためには、実質賃金をプラスに転換することが不可欠だ。

今年の春闘の労使交渉が始まった。労働組合の連合は、3年連続で全体の賃上げ目標を5%以上、中小企業については6%以上を目安に設定した。経団連は指針において、基本給を底上げするベースアップ(ベア)の検討を「賃金交渉の標準」と位置付け、ベアを前提とした労使協議を呼びかけている。

大企業と中小企業の賃上げ格差

2025年の春闘では、人手不足や物価高を背景に、定期昇給やベアを含む大手企業の平均賃上げ率は2年連続で5%を超えた。しかし、連合傘下の労働組合のうち中小企業は4%台にとどまっており、大企業と中小企業との賃上げ格差の是正が焦点となっている。

労働者の約7割は中小企業が雇用している。低迷する個人消費を上向かせ、国内経済を好転させるためには、大企業が自社だけでなく、取引先の中小企業などにも目配りし、賃上げの裾野を拡大することが求められる。

中小企業支援の重要性

今年1月には、下請法を改正した中小受託取引適正化法(取適法)が施行された。この法律は、発注側の大企業が受注側の中小企業に対して取引価格を一方的に決めることなどを禁止している。下請企業がコストの上昇分を価格に転嫁し、賃上げの原資を確保するための法律であり、発注側の企業は順守すべきだ。

人材の確保や流出を防ぐため、業績が伴わない「防衛的賃上げ」に踏み切る中小企業は多い。日本商工会議所の調査によると、2026年度の賃上げを約半数の企業が「実施予定」と答えたが、7割近くは「防衛的賃上げ」と回答している。

賃上げが負担となり事業継続が困難になっては元も子もない。国や自治体は、地域経済を支える中小企業への支援を強化すべきである。