元ANAキャビンアテンダントが寒霞渓ロープウェイ初の女性運転士に
小豆島の観光名所として知られる寒霞渓ロープウェイで、全日本空輸(ANA)の客室乗務員(CA)・大谷早貴さん(30)が女性初の運転士に就任した。ANAの副業制度を活用し、昨年4月から同ロープウェイを運行する小豆島総合開発に勤務。フライトの合間を縫い、移住した高松市からフェリーで通勤しながら、接客や改札業務をこなし、運転士としてもデビューを果たした。
大谷さんは「CAの経験を生かし、安全運行に貢献したい」と意気込みを語る。操舵室では、自動運転のゴンドラを目で追い、風向きや揺れ方に異常がないかを注視。ゴンドラが駅に近づくと計器を確認し、減速を確かめるなど、細心の注意を払っている。
副業制度が転機に、地域移住で新たな挑戦
大谷さんが運転士への道を歩み始めたきっかけは、ANAの「地域移住&兼業プロジェクト」だった。2021年10月に社内で始まったこの制度は、CAが地方に住み、本業の合間に地元の自治体や企業で働くことを支援するもの。大谷さんは「視野を広げたい」と考えながらも、具体的な兼業先を見つけられずにいた。
転機となったのは昨年2月。兼業先のリストで寒霞渓ロープウェイを見つけ、子どもの頃に親戚に連れられて乗った記憶がよみがえった。「初めて空中から眺めた大自然の姿を思い出した」と振り返る。東京から高松市に移住し、国際線のCA業務を続けながら、月に5~7日、島に通う生活をスタートさせた。
多忙な日々も自然に囲まれた仕事にやりがい
大谷さんの日常は多忙を極める。4日間のフライト後、5日間の休みを利用し、早朝のフェリーで島に渡る。切符売り場でのアナウンスや団体客の誘導、売店業務をこなし、その合間に操舵室に入る。勤務中は常に無線のイヤホンを装着し、手の足りない部署をサポートする。
「安全運行を担うという点では、フライトもロープウェイも同じ」と大谷さん。さらに「副業にもかかわらず、最も大事な『安全運行』を託されるとモチベーションが高まる」と語る。機内とは異なり、自然に囲まれ季節の移ろいを感じながら働ける環境にも魅力を感じている。
英語アナウンス導入など新たな価値を提供
寒霞渓ロープウェイ側も大谷さんの貢献に期待を寄せる。営業部の工藤真樹さん(54)は「初めて英語のアナウンスマニュアルを作ってくれたほか、実際に商品を試して客に説明するなど、その姿勢はスタッフの刺激になる」と評価する。
大谷さん自身も「許される限り、寒霞渓ロープウェイでの副業を続けたい」と意欲を見せている。CAとして培った接客スキルと安全への意識を、観光地の運営に生かす新たな挑戦が続く。
寒霞渓ロープウェイは、標高612メートルの山頂駅と約320メートル下のこううん駅を結ぶ全長約920メートルの路線。2基のゴンドラが交互に渓谷を行き来し、通常のダイヤは12分間隔で運行されている。



