ゾウが地域から姿を消すと、多くの糞虫も連鎖的に絶滅するリスクがあることが、アメリカのプリンストン大学などの研究チームによる実験とシミュレーションで明らかになった。研究成果は28日、科学誌サイエンスに掲載された。このような共倒れ現象は、サバンノの生態系の健全性や家畜にまで悪影響を及ぼす可能性があるという。
生態系の連鎖崩壊を実証
生態系から、多くの種と密接に関わる重要な種が失われると、それに依存する種も次々に絶滅する可能性が指摘されてきた。しかし、これまではシミュレーション研究が中心で、野外での実証例は乏しかった。今回の研究は、その空白を埋めるものだ。
実験方法:人間のフンも活用
チームはケニアのムパラ研究センターで、草や木の葉を主食とする8種類の動物(ゾウ、キリン、シマウマ、インパラなど、体の大きさが異なる)と、ベジタリアンの人間のフンを使ったトラップを計504個設置した。調査地で確認された179種の糞虫のうち、トラップで132種、計4231匹が捕獲された。多くの糞虫は複数の動物のフンに集まったが、ゾウのフンは他の動物に比べて種数で2~6倍、個体数で1.5~24倍もの糞虫を引きつけた。最も不人気だったのはキリンのフンで、人間のフンは3番目に人気だった。
データ分析とシミュレーション
6カ所での操作実験のデータを基に、チームは生態系モデルを用いてシミュレーションを実施。その結果、ゾウが地域から完全に消失した場合、糞虫の種の約30%が絶滅する可能性があると推定された。これにより、糞虫によるフンの分解や土壌の栄養循環が滞り、サバンナの植生や家畜の飼料環境に悪影響が及ぶと予測される。
研究の意義
本研究は、大型動物の保護が生態系全体の安定性に不可欠であることを示している。特にゾウは「生態系エンジニア」としての役割を果たしており、その消失は糞虫だけでなく、さらに広範な生物多様性の喪失につながりかねない。研究者らは、野生動物の保護政策において、こうした連鎖的な影響を考慮する必要性を強調している。



