山口県宇部市のときわ動物園を運営する市常盤動物園協会の事務所に、同園で展示されている全13種類のサルが描かれた鉛筆画「in their eyes」(高さ170センチ、幅258センチ)が飾られている。この作品はサルの側から人間の世界を見つめたもので、同市の一級建築士である平山悟さん(63)が手がけた。一般の来園者も観覧することができる。
建築士が描いたサルたちの視線
平山さんは、東京の武蔵野美術大学造形学部建築学科を卒業後、建築士として働く一方で、彫刻作品などの制作にも取り組んできた。同園の2015年のリニューアルオープンに向けた工事に携わり、同事務所の設計を担当した。リニューアル後、同園では生息地の自然に似た環境で飼育する「生息環境展示」を導入。当時、完成した獣舎や放飼場にサルたちを移した際、サルたちが不思議そうな表情を浮かべたり、威嚇したりしながらじっと平山さんを見つめてきたという。その瞬間、「彼らの目には我々人間はどのように映っているのか」と考えたことが、この鉛筆画の創作のきっかけとなった。
約10年の制作期間
平山さんは何度も同園に通ってサルを観察し、写真を参考にしながら、10Hから10Bまでの鉛筆を駆使してキャンバスに向かった。途中、描くのを中断した期間もあったが、自宅のアトリエで約10年かけて今年1月に完成させた。作品の手前にはシロテテナガザルやハヌマンラングール、ジェフロイクモザルなどが描かれ、奥には伐採されて燃えている森林や原爆のキノコ雲が表現されている。左下部など一部はガスバーナーで焼いて黒く焦がし、作中の燃える森林の炎が燃え移ったという意味合いを込めた。また、ハヌマンラングールなどの目には小さなキノコ雲も描かれている。
平山さんは「当時のサルたちの様子から、人間による環境破壊を動物たちに責められているような気がして、私が潜在的に感じている人間としての負い目が作品に表れている」と語る。この作品は昨年度の県美展で優秀賞を受賞し、今月20日に宇部市に寄付された。平山さんは「この絵は絵画としても楽しめるし、見た人が環境問題に関心を持つきっかけにもなる可能性がある」と話している。
観覧についての問い合わせは同園(0836・21・3541)へ。



