火災を乗り越え、新たな場所で店を切り盛りする野崎さん。「大変だったが、頑張ってきて良かった」と振り返る=いわき市・スナック葵。2年前に火災があった現在の現場には、新しい建物や駐車場などが整備され、砂利が敷かれているだけの部分もある。
いわき市平字田町の繁華街で2024年、13棟を焼いた大規模火災は、26日で発生から2年を迎えた。突然の大火で約40年間切り盛りしてきた店を失い、一時は失意のどん底に落ちた女性店主は、常連客の励ましを受けて再起し、カウンター越しに笑顔を届けている。
新たな出会いと再出発
路地に面したビルの入り口。夜になると「スナック葵」と書かれた看板が白く光る。「観光で大阪から来たという人もいた。火災前の店ではなかったいろいろな出会いがある」。店主の野崎恵子さん(76)は語る。
火災前のスナック葵は1984年にオープン。約5.5坪で収容人数は10人ほどだった。「狭い店だが、幅広い年代の人が会話やカラオケで交流するにぎやかな店だった」。店でたまたま出会った男女が仲を深めて結婚したこともあり、「2人の結婚式に呼んでもらったのが一番の思い出」と懐かしむ。
突然の火災、失意の日々
だが、あの日が全てを変えた。野崎さんは店から徒歩約10分の自宅で休んでいた際に、消防車のサイレンの音を聞いた。最初は「まさかうちの店ではないだろう」と思ったという。
近くの店から出た火は、店がある2階建ての建物に燃え移った。店は燃えなかったが、消火作業で水浸しになり、天井はぼろぼろ。「とても再開できる状態ではなかった。1週間くらい何も手に付かなかった」。今後のことを考えると、途方に暮れた。
常連客の言葉が力に
そんな中、常連客が声をかけてくれた。「この店がなくなると行くところがなくなる。また頑張ってくれ」。多くの励ましを受け、野崎さんは再び店を開くことを決意。店の片付けや引っ越しなどの開店準備に明け暮れ、火災から約4カ月半後の2024年10月、南に500メートルほど離れた平字十五町目で新しい店を始めた。
再起から1年半、笑顔のカウンター
再起から1年半、店には40年来の常連客のほか、観光客など新規の客も多く訪れる。純和風の雰囲気の店では、客の提案でおにぎりなども出すようになった。「大変だったが、頑張ってきて良かった」と野崎さん。「人生何が起こるか分からない。悔いが残らないよう、無理のない程度で続けていきたい」。大きな苦難を乗り越え、これからも訪れる人に楽しいひとときを提供していく。
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いわき市平字田町の繁華街の大規模火災は、2024年5月26日午前10時ごろ、JRいわき駅から南西約200メートルの飲食店が立ち並ぶ繁華街で発生。全焼5棟、半焼2棟を含む13棟が被害を受けた。現場は現在、建物や駐車場が整備されているが、砂利が敷かれているだけの部分も残っている。平飲食業会の鈴木大介会長によると、同会に加盟し、全焼した店舗は3軒で、うち2軒は別の場所で再開、1軒は営業をやめている。



