任侠電器 第62回 今野敏
「自分もお供します」
日村は車を下りた。だが、どこにトイレがあるかわからない。きょろきょろしていると、阿岐本はすたすた歩き出した。
どこに行くのだろうと思っていると、右手に公園が見えてきた。公衆トイレがある。日村は驚いた。
阿岐本は、この公衆トイレのことを知っていたのだろうか。
「お待ちください」
日村は言った。「中の安全を確かめます」
「あほか」
阿岐本が言う。「こんなところに鉄砲玉でもいるってのかい」
阿岐本は中に入り、用を足す。悠々と出てくると言った。
「おめえも、行っとけ。長丁場になるぞ」
「はい」
言われたとおり用を足し、二人は車に引き返した。
「あの公園のこと、前からご存じだったんですか?」
「知らねえよ。だが、こんな住宅街だ。公園くらいあるだろうと思った。そして、公園にはたいてい手洗いがある」
たかが手洗いの話だが、こんなところも阿岐本はさすがだと、日村は思った。



