海外赴任者の健康管理マニュアル、遺族と企業が共同で作成
プラントメーカー大手のカナデビア(大阪市、旧日立造船)は29日、海外で働く社員の健康管理のためのマニュアルを、タイ駐在中に亡くなった社員の遺族と共同で作成したと発表した。大阪市内で記者会見を開き、公表した。
このマニュアルは、2021年にタイ中部ラヨーンに駐在していた同社のエンジニア、上田優貴さん(当時27)が亡くなったことを受け、遺族の上田直美さん(55)が再発防止を求めて会社側に提案し、実現したもの。大阪南労働基準監督署は24年、海外での不慣れな業務や長時間労働、上司からの叱責などによる心理的負荷が原因として労災と認定している。
異例の共同制作、再発防止へ
遺族側の代理人弁護士によると、企業と遺族が共同で再発防止のマニュアルを作成するのは極めて異例だという。海外赴任中の労働者には原則として労働基準法が適用されず、過労死ラインを超える時間労働しても労働基準監督署の指導が及ばないため、適切な労働時間管理が行き届かず、過労死や過労自殺に至るケースが問題視されている。
直美さんは「このような内容が守られていれば、息子は死なずに済んだかもしれない」と話し、25年2月から10回にわたり会社側と打ち合わせを重ねてきた。
マニュアルの具体的内容
マニュアルは、カナデビアで1カ月以上海外に派遣される社員を対象に、出発前、着任後、帰国後の各段階で会社側が配慮すべき事項を列挙。主な内容は以下の通り。
- 派遣先の業務内容や勤務時間を事前に詳細に説明する
- 派遣者向けの研修を充実させる
- 心理的ケアを強化するため、海外派遣者専用の相談窓口を設置し、本人だけでなく家族にも周知する
- 入社3年目までの若手や初めての海外派遣者には指導役を同行させる
- 現地では日本の労働時間規制を遵守し、毎月の面談で疲労感や帰国希望を確認する
遺族の願い「モデルケースに」
直美さんは「カナデビアには、このマニュアルを守り、海外での過労死を起こさない企業のモデルケースになってほしい」と期待を寄せている。今回の取り組みが、他の企業にも波及し、海外赴任者の健康管理が改善されることが望まれる。



