東京が「クマのホットスポット」に?住宅街出没で警戒レベル急上昇
東京が「クマのホットスポット」に?住宅街出没で警戒

全国的にクマの出没が相次ぐ中、東京都も例外ではない。奥多摩町の山中では今月、登山中の男性が襲われてけがをしたほか、襲われた可能性がある遺体も見つかった。一方、八王子市郊外の住宅地近くでは4月29日、ツキノワグマが出没。都内でもクマが人の生活圏に活動範囲を広げようとする兆候として、衝撃をもって受け止められた。1カ月がたとうとする今も、市などが警戒を続けている。

2000世帯が暮らすエリアでの衝撃

「一報を聞いたときは半信半疑だったが、映像を見て驚いた」。体長1メートル超のクマの出没が確認された雑木林の向かいの一戸建てに住む60代男性は話す。現場はJR八王子駅から西へ5.5キロ。徒歩圏には住宅や大型店舗が立ち並び、小学校や保育園もある。市によると、半径500メートル圏内に約2000世帯が暮らす。

クマは近隣住民がイノシシ用のわなと共に設置したカメラが撮影した。生息地である西側の山間部から下りてきたとみられ、男性方の裏手に設置されたわなの中の米ぬかに興味を示しているように見える。「庭に塀がなければ、クマに入られていたかもしれない」。男性は不安を口にする。

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緊急対策:電気柵やクマスプレー

「(今回の出没で)クマの生息域が広がったとみるのはまだ早いが、人間側の警戒レベルは上げる環境に変わった」。初宿和夫市長はそう語り、市幹部から成る対策チームを発足させた。緊急対策として、山間部の小中学校にクマよけの鈴を、保育園や幼稚園、自治会などにクマ撃退スプレーを配る。高周波の音を出してクマを遠ざける装置や、移動式の電気柵の整備も急ぐ。

市の委託を受けた鳥獣捕獲会社の担当者は今月20日まで毎日、現場を訪れて新たなクマの痕跡がないことを確認した。現在はカメラを設置して異常の有無を監視している。

専門家「分布拡大の過渡期」

奥多摩地域でツキノワグマの調査をしている東京農工大の小池伸介教授(生態学)は現在、都内のクマは「分布拡大の過渡期」だとみる。「今回、住宅街の近くに出たクマは一時的なものだと考えているが、迫っていると感じる。何もしなければ恒常的に出没する可能性はある」と話す。

小池教授はクマが人との接触を避けるために、住む領域を分ける「ゾーニング」の重要性を強調する。ゾーニングには、誘因となるゴミや木の実をクマが食べられないようにすることや、住宅地近くの山の下草を刈ることが有効とされる。

都は猟友会と巡回を始めたほか、下草刈りや電気柵の設置など市町村と連携した防除対策を実施するという。小池教授は、どこに出没の防衛ラインを引くのか、都が明確にして対策のリーダーシップを発揮することを望む。「小さな集落が自力でゾーニングをするのは大変だ。都はやぶを払う程度ではなく、クマ対策を含めた都全体の森林管理をするくらいの中長期的な視点で方針を立ててほしい」

首都圏のクマ出没状況

東京都以外の首都圏では、神奈川、埼玉両県でも出没情報がある。千葉県は生息していないとされる。2025年度の出没情報は東京212件、埼玉172件、神奈川91件だった。同年度の人身被害は東京都の1件のみだった。

環境省の担当者は「首都圏では山奥に生息している個体が多いとみられ、人と接する機会は少ない」と話す。ただ、首都圏でも生息数の増加は確実視されており、「市街地に出没する個体を速やかに捕獲する準備、市街地に出没させない対策を進めなくてはいけない」と警戒している。

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