実態のない事業をあたかも存在するかのように装い、自社の株式を別会社に高額で購入させたとして、警視庁は13日、IT企業「MTU」(東京都港区)の前社長、原拓也容疑者(38)=東京都渋谷区=を詐欺の疑いで逮捕した。捜査関係者への取材で明らかになった。
約16億円の株購入を詐取か
捜査関係者によると、原容疑者は2024年12月から2025年2月にかけて、投資会社「J-STAR」(東京都千代田区)に対し、医療機関向けのオンラインセキュリティサービスなどで2024年に約9億円の売上実績があると虚偽の説明を行った。その結果、J-STARにMTUを優良企業と誤認させ、同社の株式約1万株を約16億円で購入させた疑いが持たれている。
J-STARは2025年2月にMTUを買収。原容疑者は引き続き社長を務めたが、翌月に「重大な疑義が生じた」として解任された。
宣伝していたセキュリティサービス「Mowl」
MTUは当時、医療業界ではサイバー攻撃による診療停止などのリスクがあるとし、医療機関向けのセキュリティクラウドサービス「Mowl」を提供していると宣伝。このサービスは、ウェブサイトの脆弱性診断や不審なメールの調査などを謳っていた。
捜査関係者によると、原容疑者は買収前、J-STARに対し、50以上の医療機関にMowlが導入されているとする資料を示し、このサービスにより1つの医療機関から月300万円以上の売上があると説明していた。また、無関係の知人に依頼し、技術面の説明を代行させていたという。
警視庁は、こうした事業の実態はなかったとみて捜査を進めている。
テレビ番組で紹介された経緯も
MTUはテレビ番組で紹介されたこともあり、注目を集めていた。原容疑者は逮捕前、メディア露出を通じて企業イメージを高めていた可能性がある。警視庁は、詐欺の全容解明に向け、関係者への聴取を進める方針。



