職場における男女格差の度合いを簡単に診断できる「ジェンダーギャップ・チェックリスト」が6月1日、公益財団法人「日本女性学習財団」(東京)によって公開された。今年で創立85周年を迎える同財団が開発したこのツールは、個人でも事業所単位でも無料で利用できる。なぜ今、格差チェックが必要なのか。財団の野村浩子理事長に話を聞いた。
チェックリスト公開の背景
同財団はこれまで、女性の学びやキャリア形成支援に取り組んできた。チェックリスト公開のきっかけは、女性活躍推進法の改正により、2026年春から従業員101人以上の事業所に対して男女間の賃金格差や女性管理職比率の公表が義務化されたことだ。
「中小企業にとって、格差の背景や要因を分析し、どう解消すべきかを考えるのは負担が大きい。現状の課題を浮き彫りにし、何から手をつければよいかを示すツールが必要だと考えました」と野村さんは語る。
野村さんは雑誌「日経WOMAN」の編集長を務め、著書『地方で拓く女性のキャリア』(光文社新書)などで働く女性の現場を取材してきた。その経験から、職場での働きづらさや「モヤモヤ感」は、大都市と地方、企業規模によっても差があると実感しているという。
チェックリストの内容と特徴
チェックリストは全30問で、「採用・雇用形態」「配置」「育成」「評価・登用」「環境・慣行」の5分野に分かれている。質問に答えると、A(優れている)からD(課題が多い)までの4段階で診断結果が表示され、レーダーチャートで企業の弱い分野が一目でわかる仕組みだ。
質問項目には、「面接で女性にのみ子育てとの両立が可能かどうかを尋ねる」「長時間の残業や休日出勤は主に男性が担っている」「飲み会やゴルフが仕事上の重要なコミュニケーションの場となっている」など、日本の職場にありがちな「あるある」事例が盛り込まれている。
野村さんは、「チェックリストに『女性専用のトイレが設置されている』という項目を入れましたが、働く環境自体が整っていない事業所もまだ多い」と指摘する。「女性に選ばれない職場に企業の成長はない。格差解消が企業の未来につながることを、経営層を含めて知ってもらうきっかけになれば」と期待を込める。
開発の経緯と今後の展望
チェックリストの開発には、野村さんのほか統計の専門家など計5人からなる委員会が約1年かけて準備を進めてきた。公開前に複数の事業所でテストケースとして実施したところ、C評価が目立ったという。
個人でも参加できるため、「自分の働きにくさや『モヤモヤ感』の正体を可視化し、例えば会社と交渉する際の材料として活用するなど、さまざまな使い方をしてほしい」と野村さんは話す。
個人の場合は、同財団のホームページから手軽に診断できる。事業所単位で参加する場合は申し込みが必要だが、部署ごとに比較することも可能になる。
関連イベント
チェックリスト公開を記念して、6月25日には『男女賃金格差の経済学』(日本経済新聞出版)の著者である大湾秀雄さんによるオンライン講演会が開催される。詳細は日本女性学習財団のウェブサイトで確認できる。



