職場のジェンダー課題を考える:賃金格差とマミートラックの実態
新年度が始まり、新しい職場や部署で働き始める人々が多い季節を迎えています。この連載の初回では、働く現場で深刻な課題となっている二つの重要な用語、「男女の賃金格差」と「マミートラック」に焦点を当て、その実態と背景を詳しく解説します。
改正女性活躍推進法の施行と賃金格差公表義務化
2026年4月1日、改正女性活躍推進法が施行され、従業員101人以上の企業に対して、男女間の賃金差の公表が義務付けられました。この法律の目的は、個人の能力ではなく社会の仕組みによって生み出される構造的な格差を改善することにあります。具体的には、企業が賃金データを透明化することで、格差是正への圧力を高め、公正な職場環境の実現を目指しています。
厚生労働省が発表した賃金構造基本統計調査(2025年)によると、フルタイムで働く男性の平均月給は37万3400円であるのに対し、女性は28万5900円でした。これを男性を100とした指数で表すと、女性は76.6に留まっており、依然として大きな開きが存在しています。この数字は、長年にわたる政策努力にもかかわらず、根本的な解決には至っていないことを示唆しています。
国際比較から見る日本の立ち遅れ
日本の男女賃金格差は、国際的にも深刻な立ち遅れが指摘されています。OECD(経済協力開発機構)の2023年データによると、男性の賃金を100とした場合の女性の賃金は、加盟国平均で89であるのに対し、日本は78と大きく下回っています。この状況は、「男女雇用機会均等法」が制定されてから40年が経過した現在でも、採用や昇進における男女均等な扱いが完全には実現していないことを反映しています。
なぜ、このような格差が解消されないのでしょうか?その背景には、複雑な社会的要因が絡み合っています。例えば、女性が育児や家事の負担を一手に引き受ける傾向が強く、それがキャリアの中断やパートタイム労働への移行を促し、結果として賃金低下につながるケースが少なくありません。また、無意識のバイアスや慣習的な人事評価システムも、格差を固定化する一因となっています。
マミートラック:女性のキャリア停滞を生む構造
「マミートラック」とは、出産や育児を機に、女性が管理職や専門職への昇進機会を失い、比較的責任が軽く昇給の見込みが少ない職務に固定されてしまう現象を指します。このトラックに乗ると、賃金上昇が鈍化し、長期的なキャリア発展が阻害されるリスクが高まります。マミートラックは、単なる個人の選択の問題ではなく、職場の制度や文化が生み出す構造的な課題として認識されるようになってきました。
企業側の対応としては、柔軟な働き方の導入や育児支援制度の充実が進められていますが、それだけでは不十分な場合が多いです。根本的な解決には、男性の育児参加を促進する社会的な意識改革や、評価基準の見直しなど、多角的なアプローチが必要とされています。
今後の展望として、改正女性活躍推進法の効果がどのように現れるかが注目されます。賃金差の公表義務化により、企業はより積極的な格差是正策を講じることを迫られるでしょう。また、労働者自身も、こうした情報を活用して自身の権利を主張する動きが広がることが期待されています。職場のジェンダー平等は、単なる倫理的問題ではなく、経済成長や社会の持続可能性にも深く関わる重要なテーマです。



