選択的夫婦別姓の導入が国に答申されてから30年が経過した。この間、幾度となく法案化が試みられ、政権交代もあったが、いまだに実現していない。現在、女性初の首相である高市早苗首相は、結婚後の旧姓使用を法制化する方向で動いている。推進に挑み続けてきた先駆者、元国会議員の円より子氏に、なぜ実現できないのか、その苦闘の歴史と現状を聞いた。
法制審答申から30年、なぜ実現しないのか
法制審議会が選択的夫婦別姓の導入を答申した翌年の1997年、当時参院議員だった円より子氏は、議員立法の法案を提出した一人だ。それから約30年、どのように実現に挑み続け、肉薄したり突き放されたりしてきたのか。背景にある政治構造について、東海大学教授の辻由希氏の解説も交えながら、円氏の証言をもとに考察する。
高市首相の旧姓使用法制化は逆風か
高市首相は、夫婦同姓の維持を前提に、結婚後の旧姓使用を法制化する法案の国会提出を目指している。これは選択的夫婦別姓の導入にとって逆風と見られる。円氏は「高市さんも女性を取り巻く様々な壁に直面してきたはずだ。それでも諦めず、日本初の女性首相となり、衆院解散・総選挙で圧勝した。胆力のある強い人だと思う」と評価する一方、「彼女も理不尽な壁から受ける女性の痛みを知っているはず。壁を突き崩す政策に期待したが、選択的夫婦別姓には真っ向から反対で、私を支持してきた女性の中には、女性首相誕生を喜んだのと同じぐらい失望している人が少なくない」と語る。
石破政権での審議とその後の展開
一つ前の石破茂政権では、選択的夫婦別姓法案が衆院で28年ぶりに審議された。円氏は「1991年に法務大臣が夫婦同姓の見直しを法制審議会に諮問し、96年に選択的別姓の導入が答申された。政府は法案の国会提出を目指したが、自民党の反対で断念。97年に野党が同趣旨の法案を提出し、一部が審議されていた。それ以来だった」と振り返る。
実現の機運が高まった背景には、自民党内で別姓賛成の政治家が増えたこと、既婚女性の就業率上昇により経済界が別姓の必要性を認識したこと、連合会長に芳野友子氏が就任したことなどがある。円氏も「選択的夫婦別姓に追い風が吹いていたのは確か」と認める。
円氏の国政復帰と法案策定
円氏は石破政権下の2024年衆院選で、国民民主党から当選し、14年ぶりに国政に復帰。法務委員会の理事となった。「長年追求してきた夫婦別姓をやれ、という天の声だと思った」と語る。当選後、党の男女共同参画推進本部長として法案策定に着手したが、党内にも反対派や慎重派が多く、「公約ですから」と説得し、2025年の国会に何とか法案を提出できた。立憲民主党も選択的夫婦別姓法案を、日本維新の会は旧姓通称使用の法制化法案を提出し、5月には委員会で審議入りした。
法案成立の見通しと今後の課題
法案成立の見通しについて、円氏は「賛否が割れる自民党だが、成立も可能ではないか」と期待を込める。しかし、高市首相の旧姓使用法制化は選択的夫婦別姓とは別の道であり、推進派にとっては厳しい状況が続く。円氏は「見果てぬ夢ではない」と強調し、今後も粘り強く取り組む姿勢を示している。
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