関節リウマチ治療の最前線:早期診断と個別化医療で目指す寛解
関節リウマチ治療の最前線:早期診断と個別化医療で目指す寛解

みなさんの笑顔と元気をサポートする「健康ジャーナル」。福島赤十字病院(福島市)の先生方による、健康にまつわる多彩な話題をお伝えします。今月は外科部長の中島隆宏先生が担当します。

関節リウマチとは?

関節リウマチは、免疫の異常(自分を攻撃してしまう状態)により関節の痛みや腫れが起き、放置すると関節破壊や日常生活の制限につながる病気です。かつては痛みと付き合っていく病気の一つとされていましたが、現在は様々な治療薬が開発されています。痛みを我慢するのではなく、炎症を十分に抑えた“寛解”または低疾患活動性に到達して、その状態を維持することが治療の目標となります。

関節リウマチは、早期に治療を開始するほど治りも早い病気です。そのため、治療には早期診断が大変重要です。症状としては朝のこわばり、指や手首の腫れ、左右対称の痛みが続く場合が多いですが、高齢の方では肩や膝など大きな関節にも症状が出る場合が多く見られます。また、血液検査で関節リウマチに特徴的な項目(リウマトイド因子、抗CCP抗体など)の確認が必要ですが、近年ではこれらの項目が出ない関節リウマチも知られており、レントゲンや超音波、MRIで総合的に関節の炎症を確認し、診断することが多くなっています。

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治療法は年々進化しています

関節リウマチ治療の基本は「Treat to Target(目標達成型治療)」を意識することです。CRP(炎症によって増えるタンパク質)などの炎症反応、関節の痛みや腫れ、日常生活にどの程度支障が出ているのかを定期的に評価し、目標に届かなければ治療を調整します。

早期ではメトトレキサートに代表される従来型の抗リウマチ薬を使用し、それでも効果が不十分な場合は「分子標的薬」という薬を使用します。これは、特定の分子だけに作用する薬で、炎症の原因となる物質を抑える「生物学的製剤」や、炎症を引き起こす細胞内信号をブロックする「JAK阻害薬」といった薬があります。日本では生物学的製剤が2003年から、JAK阻害薬が2013年から使われるようになり、これに伴い寛解や低疾患活動性の患者さんが年々増えてきました。これらの分子標的薬は、関節破壊の進行を抑える力が強いのですが、同時に感染症などの副作用に注意する必要もあります。そのため、年齢、持病、喫煙歴、過去の感染症・ワクチン接種歴などを踏まえた安全管理が欠かせません。治療開始前後に肺炎球菌、インフルエンザ、帯状疱疹などのワクチン接種を検討し、定期的な血液検査で早めに副作用を発見することが重要です。

これらの他にステロイドを使用する場合もあり、即効性がありますが、長期使用は副作用が増えることから、必要最小限・短期間の使用とするのが基本です。

納得して治療していくために

長く付き合う関節リウマチという病気だからこそ重要になるのが、シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM:共同意思決定)という概念です(図1)。

ここまでお話ししたように、治療には複数の選択肢があります。その上で、「何を大事にした治療をしたいか」は人によって違います。例えば「痛みを最速で抑えたい」「将来の妊娠を考えたい」「通院回数を減らしたい」「注射が苦手」「感染症が心配」「費用を重視したい」などです。こうした価値観は我々医療者から見た“医学的な正解”だけでは決められません。私たちは効果とリスク、検査や通院の頻度、費用の目安を分かりやすく説明し、患者さんは生活背景や希望を伝えます。その対話を通じて、納得して治療を選ぶのがSDMです。

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例えば、高齢で感染が心配な方では、過去の感染歴や腎機能など加齢による変化を踏まえて薬剤を選び、どこまで免疫(炎症)を抑えるのかの方針を決めます。逆に、働き盛りのため短期間で症状を落ち着かせて仕事復帰を急ぎたい方では、作用発現の速さや投与方法(内服か注射か)を軸に選ぶこともあります。また、妊娠希望の方であれば、どの治療薬が妊娠・出産における安全性が高いか、妊娠期間のどのタイミングで治療薬の変更が必要かなど、相談しながら治療内容を決めます。将来的に寛解が続けば、薬を減らすという次の選択肢も出てきます。SDMのためには、受診の際に「生活で何を優先するか」「治療においてどのような心配ごとがあるか」「病気や薬の説明を聞いた上でどのような治療法を希望するか」を一緒に決めていきます。

関節リウマチの治療は大きく進歩し、一人ひとりに合った方法を選べる時代になっています。長く付き合っていく病気だからこそ、治療方針を初診で一回決めて終わりではありません。SDMに基づき、ライフプランに合わせて都度更新していくことで将来の関節の破壊を防ぎつつ、患者様の生活を守ることができます。この記事が皆様のご参考になれば幸いです。

次回は救急科部長の大久保怜子先生が「心肺蘇生」をテーマにお話しする予定です。