2016年1月、長野県軽井沢町で発生したスキーバス事故を巡る控訴審判決が東京高裁で下され、業務上過失致死傷罪に問われた運行会社社長の高橋美作被告(64)と、当時の運行管理者荒井強被告(57)に対し、それぞれ禁錮3年、同4年とした地裁判決を支持した。遺族らは判決後、東京都千代田区の司法記者クラブで会見し、胸中を明かした。
遺族の思い
長女の衣里さん(当時19歳、東海大1年)を亡くした父池田彰さん(61)は、「判決を聞くまでは逆転されるかもと複雑な思いだった」と吐露。運行管理がずさんだったとして「会社がすべきことをしなかったと認められた。『予見はできないのでなく、しなければならない』ことが社会に浸透してほしい」と語った。
次男の寛さん(当時19歳、首都大学東京(現東京都立大)2年)を失った遺族会代表で父の田原義則さん(60)は、「10年間、息子に背中を押されているつもりで再発防止に取り組んできた。会社の責任が認められたことで、重要性が高まった」と強調。一方で、福島県の磐越道で高校生が死亡したマイクロバス事故を受け、「判決が1、2カ月前に出ていたら防げたのではないかと、すごく悲しくなった」と唇をかんだ。
長男の陸人さん(当時19歳、東京農工大1年)を失った父大谷慶彦さん(61)は、会見で陸人さんの写真を立てかけ、「(一審支持でも)陸人に会うことはできず、悲しみは一生消えない」と悔やんだ。両被告には「上告はしないでほしい。これ以上遺族を悲しませず、罪を償ってほしい」と求めた。
判決の内容と意義
二審判決では、技量が不十分な運転手にハンドルを握らせ、法律で定められた指導監督や点呼も適切に実施していなかったと指摘。「(両被告は)事故を予見できた」として、会社側の責任を認めた。
遺族側の弁護団は、「判決では、『法律で決められたことをしなかった以上、(事故を)予見できた』といった言い方だった」とした上で、「今後の判決に影響を与える一つのリーディングケースになるのでは」と見立てた。
専門家の見解
元検事で企業の管理過失に詳しい山本憲光弁護士は、「運転手が亡くなり正確な過失を特定しにくかった中で、運行会社の管理責任を重視した判決になった」と評価。運行会社は個々の運転手の技量を把握しなければならなくなり、業界の安全面に与える影響は大きいと指摘。これまでは運転手の具体的な過失を特定することに重きを置いていたが、今後は今回の判決の影響で、運行管理責任を重んじる傾向になると述べた。
遺族の今後の決意
池田さんは「一審と同じでホッとした。この判決によって、より安全な運行をしていく社会になれば」と述べ、田原さんは「会社の責任が認められたことで、重要性が高まった」と強調。大谷さんは「陸人に会うことはできず悲しみは一生消えないが、この判決を無駄にしないよう、再発防止に努めてほしい」と訴えた。



