インドネシア保健省が運営する首都ジャカルタ郊外の医療福祉大学で、昨年助産学科を卒業したマルディヤーさん(22)は、日本の介護施設で働くことを夢見て、同大学の日本語コースに再入学した。1年間の受講後、どの地域で働くかは未定だが、「三重県は景色がきれい。大学のジョブフェアで知り、働く環境がよさそう」と将来像を描く。
官民一体で進む人材確保の広がり
本紙の47都道府県と20政令指定都市へのアンケートで、4割超の31自治体が海外政府や大学と人材確保のためのMOUを締結していることが判明。複数の国・地域と結ぶ自治体も増え、受け入れルートの多国籍化が進んでいる。
三重県の挑戦:MOUで地方創生
三重県は2024年、インドネシア保健省と介護人材派遣を目的としたMOUを締結。県人材確保・外国人政策調整課の水谷啓佑課長補佐(45)は「都市部との人材獲得競争に備えるため」と説明する。愛知と大阪に挟まれた同県は、毎年5千~6千人の転出超過に悩み、県内企業の99.8%が中小企業で、半数が人手不足に直面する。MOUは海外の若者に三重県を選んでもらうための打開策だ。
茨城県:5カ国と連携し多国籍化
締結相手が最も多いのは茨城県で、5カ国とMOUを結んでいる。2019年にベトナム政府との製造業・介護分野での実習生受け入れを皮切りに、2020年にインドネシア教育大、その後モンゴル、ネパール、インドへ拡大。県労働政策課の担当者は「人材の送り出しが見込めるかだけでなく、国の強みや特徴を見て開拓した」と語る。特にインドは競合する自治体が少なく、今年1月の企業説明会には600人以上の学生が集まった。
企業の現場:多国籍化は自然な結果
茨城県古河市の配電盤製造「宇賀神電機」は、モンゴルの理工系学校法人とのパイプを活用し、同校からの採用を検討。千葉文亮工場長(53)は「進出の取っかかりとして頼れるルートがあるのは大きい」と話す。同社は既にインドネシアやミャンマーなど5カ国から人材を受け入れ、従業員約130人の1割が外国人。千葉工場長は「狙って多国籍にしたわけではない。優秀な人材を求め、気付いたらそうなった」と振り返る。
人材獲得競争の行方
ベトナムに代わる新たな送り出し国を探す日本は、世界中に手を伸ばす。官民一体となった人材獲得競争は、今後も激しさを増すとみられる。



