梅の実は、5月下旬から6月にかけての短い期間だけ出回る季節の食材です。この梅を使って梅干しや梅シロップ、梅酒などの保存食を手作りする「梅しごと」は、日本の伝統的な風習であり、子どもに旬を味わう楽しさを伝える絶好の機会でもあります。料理家で発酵マイスターの榎本美沙さんに、子ども向けレシピ本『はじめてキッチン』で紹介している「梅シロップ」の作り方を教えていただきました。
「梅しごと」を通じて季節を感じる
榎本さんは毎年この時期になると「梅しごと」を行っています。ここ数年は、今年4歳になるお子さんが手伝ってくれるそうです。「梅を洗ったり、拭いたりするのはまだ水遊びの延長のような感じですが、食材に触れ、季節を感じさせる良い機会になっています。旬の食材や料理には、たくさんの学びがあります」と話します。
ただし、梅干しは漬けた後に赤シソで色付けしたり、干したりと手順が多いため、初心者にはやや難しいかもしれません。子どもにやらせるなら、氷砂糖と一緒に漬けるだけの「梅シロップ」から始めるのがおすすめです。完成したら水や炭酸水で割って「梅ジュース」として味わえるので、「子どもにとって楽しみが増え、関心を持ってもらいやすい。失敗も少ないので、ぜひお子さんと挑戦してみてください」と榎本さんはすすめます。
梅シロップの作り方
準備するもの
- 青梅(緑色で熟す前のもの)500グラム
- 氷砂糖 500グラム
- 容量2リットルの保存ビン
青梅は、なるべく傷がなく、ハリのあるものを選ぶといいそうです。
手順
- ボウルに水をためて梅を入れ、優しく洗います。
- 清潔な布巾やキッチンペーパーで水気を拭き取ります。水分が残ると傷む原因になるので、梅を1個ずつ丁寧に拭きます。
- 竹串を使って、梅を傷つけないように注意しながらへたを取ります。
- ジッパー付き保存袋に梅を入れ、冷凍庫で1日以上凍らせます。冷凍することで発酵を防ぎ、甘味を保ちます。
- 保存ビンを食品用アルコールで消毒します。
- ビンに凍った梅と氷砂糖を交互に重ねて入れます。
- ビンの蓋を閉め、直射日光の当たらない場所に置き、1日1回以上ビンを揺すって様子を見ます。徐々に梅から水分が出て、氷砂糖が溶けていきます。
- 2週間ほどで飲み頃になります。冷蔵庫に移して保存すれば、約1年間保存可能です。
完成した梅シロップは水や炭酸水で割ってジュースとして楽しめます。梅がしわしわになっていく過程を観察するのも楽しいものです。「観察日記をつけたりしてはどうでしょう。できあがった時に味わう喜びが増すはずです」と榎本さんはすすめます。
梅しごとの健康効果と食育
梅の酸味成分であるクエン酸は、疲労感を和らげ、食欲をアップさせるため、夏バテ防止に効果があるとされています。子どもに、昔からこの時期に行われてきた「梅しごと」の意味について考えさせることも、食育につながります。
書籍『はじめてキッチン』のご紹介
5月に発売された榎本さんの著書『はじめてキッチン』(Gakken、1870円)では、梅シロップ作りのほか、春は新タマネギの親子丼、秋はサツマイモのシチューなど、季節ごとに旬の食材を使ったレシピを子ども向けに優しく説明しています。漢字にはすべてルビが振られ、料理前の身支度や包丁の使い方、お米の炊き方などの基本も書かれており、子どもが自分で読んで興味を持ち、挑戦できる内容です。
コンビニやスーパーで総菜が買える時代ですが、榎本さんは「料理をすることで、自分の体がこういう食材でできているのかと興味を持ったり、食材を作ってくれた農家さんに感謝したり、家族に食べてもらう喜びを感じたり、生きていく上で大切なことが自然と身についていくのではないかと思います」と話します。子育てで忙しいとつい「子どもにやらせるより自分で料理した方が早い」と思いがちですが、たまには子どもの料理への挑戦をサポートしたり、見守ったりしてみてはいかがでしょうか。



