日本の基礎研究が低迷している。イノベーションの土台が揺らぐ中、その一因として自由な研究への投資不足が指摘されている。2026年5月29日、読売新聞が「ニッポンクライシス」第2部「人・くらし」の最終回で報じた。
地下配管のAI自動化実験
東京・大手町などビジネス街の地下には、高温蒸気や冷水が流れる配管が約30キロメートルにわたって敷設されている。これらはオフィスビルや駅の冷暖房・温水の源であり、作業員が20か所以上のボイラーや冷凍機を遠隔操作している。この操作を人工知能(AI)で自動化する試験が2026年2月に始まった。背景にあるのは深刻な人手不足だ。
AI新興企業「プリファードネットワークス」(東京)が「丸の内熱供給」(同)と共同で開発を進める。現在、AIの学習データを取得中で、2027年度中の自動化を目指す。同社の開発担当、林孝紀さん(34)は「石油化学プラントなどでもAIで操業を自動化した例がある。人手不足の解消に貢献したい」と語る。
ユニコーン企業の現状
プリファード社は2014年に設立され、東京大学や京都大学の情報科学系大学院生による新興企業が前身だ。AIという新たなイノベーションで、創薬、映像制作、教育など幅広い事業を支援している。
企業価値が10億ドル(約1600億円)以上で株式未上場の新興企業は「ユニコーン企業」と呼ばれ、イノベーションを武器に現代社会の変革や経済を牽引する存在だ。しかし、日本には8社しかなく、2024年時点の米国690社、中国162社に大きく水をあけられている。
基礎研究の低迷と投資不足
日本の基礎研究の低迷は、長期的な競争力低下につながる恐れがある。自由な発想に基づく研究への投資が不足しており、産学連携や若手研究者の育成も課題だ。政府や企業は、基礎研究の重要性を再認識し、持続可能な投資を行う必要がある。
イノベーションの土台を強化するためには、短期的な成果を追うだけでなく、長期的視点に立った研究環境の整備が不可欠である。プリファード社のような挑戦が、日本の未来を切り開く鍵となるだろう。



