東京都は、AI(人工知能)を活用した高齢者の見守りシステムを、2027年度から本格導入する方針を固めたことが、関係者への取材で明らかになった。このシステムは、高齢者の住まいに設置されたセンサーやカメラを通じて、転倒や長時間の動きの停止などの異常を検知し、介護事業者や家族に通知する仕組みだ。都は、2025年度から一部地域で実証実験を開始し、その結果を踏まえて本格導入の詳細を詰める。
背景と目的
東京都内では、高齢化の進展に伴い、独居老人の増加が深刻な社会問題となっている。都の推計によると、2025年時点で65歳以上の高齢者の約20%が独居世帯であり、今後も増加が見込まれている。こうした状況下で、従来の訪問型の見守りサービスだけでは対応が追いつかず、AIを活用した効率的な見守りシステムの導入が急務となっていた。
システムの仕組み
システムは、高齢者の自宅に設置された赤外線センサーやカメラ、ドアの開閉センサーなどを連携させる。AIがこれらのデータを常時分析し、平常時の行動パターンから逸脱した場合にアラートを発する。例えば、朝の決まった時間にキッチンで動きがない場合や、夜中に頻繁にトイレに起きるなどの変化を検知する。異常が検知されると、登録された家族や介護事業者にスマートフォンへ通知が送られる。また、緊急時には直接救急隊に通報することも可能だ。
実証実験の計画
都は2025年度から、都内の複数の区市で実証実験を開始する。対象は約1000世帯を想定しており、参加する高齢者や家族の同意を得た上で進められる。実験では、システムの精度や使い勝手、プライバシー保護の観点などを検証する。特に、カメラの使用については、プライバシー侵害の懸念があるため、映像データの暗号化や保存期間の制限など、厳格なルールを設ける方針だ。
導入に向けた課題
本格導入にはいくつかの課題が残る。まず、システムの導入コストだ。センサーやカメラの設置費用、AIシステムの運用費用など、初期投資が大きくなる可能性がある。都は、機器のリースや補助金制度を検討し、高齢者の負担を軽減する方針。また、システムの誤検知による不要な通知が増えると、介護事業者の負担が増大する恐れがある。このため、AIの学習データを充実させ、精度を高める必要がある。
都の展望
東京都の担当者は、「このシステムにより、高齢者が安心して自宅で暮らし続けられる環境を整えたい。2027年度の本格導入を目指し、実証実験で得られた知見を活かして、より効果的な見守りシステムを構築していく」と述べている。都は、将来的にはこのシステムを他の自治体にも展開し、全国的な高齢者見守りネットワークの構築につなげたい考えだ。



