宇宙でもAI(人工知能)の活用が始まっている。三菱重工は、軌道上の人工衛星に搭載したAIが、海洋の衛星画像から船舶を自動検知することに成功したと発表した。従来の衛星は「撮影して地上に送る」だけの装置だったが、今後は宇宙空間でデータを処理し、送るべき情報を選別する機械へと進化しつつある。
高精細化がもたらすデータ量の課題
地球観測の高精細化が進む中、情報収集衛星などが取得する画像データは膨大になっている。しかし、軌道上を周回する衛星と地上局との通信可能時間は限られており、一度の通信で可能な限り多くのデータを送信する必要がある。送信が滞れば衛星内の記憶容量が逼迫し、次の観測のためにデータを削除せざるを得なくなる。
特に洋上の衛星画像は、陸上の都市部やインフラを撮影したものに比べて平時の需要が小さく、地上に送信されずに廃棄されるケースが多かった。
オンボードAI物体検知機「AIRIS」
こうした課題を解決するため、三菱重工はオンボード(衛星内)AI物体検知機「AIRIS(アイリス)」を開発した。AIRISは軌道上と地上の両方で学習を繰り返し、進化する仕組みを持つ。AI搭載のデータ処理装置により、衛星は撮影した画像の中から重要な情報をリアルタイムで選別し、限られた通信回線で効率的に地上へ送ることができる。
経済安全保障への応用
この技術は、経済安全保障の分野でも活用が想定されている。例えば、海上の不審船の監視や海洋資源の保護、災害時の迅速な状況把握などに役立つと期待される。衛星画像の選別・送信が効率化されることで、より迅速な意思決定が可能になる。
三菱重工は今後、AIRISのさらなる性能向上を図り、実用化を目指す。宇宙空間でのAI活用は、安全保障や商業利用の新たな可能性を切り開く。



