未来思考2045:危機と分断、AIが変える世界を読み解く鍵
未来思考2045:危機と分断、AIが変える世界

世界は急速に変化し、その方向性に不安を感じる人々は少なくない。人工知能(AI)やソーシャルメディアは日常生活に深く浸透し、私たちは技術やその提供者に支配されているかのような感覚を抱く。米中のような大国は先端技術で先頭を走るが、国際秩序への責任感は希薄に見える。未来を考えようとしても、不確実性ばかりが強調され、思考を放棄してしまいがちだ。

未来を思考するための背中押し

しかし、本書『未来思考2045 危機と分断、そしてAIは世界をどのように変えるのか?』(安川新一郎著、ダイヤモンド社)は、一人ひとりが未来を思考すべきだと力強く主張する。著者は技術や経営の分野に精通し、最先端の政治学や哲学の議論も踏まえながら、技術が政治、経済、社会を激変させる様を読み解く。その結果、読者の思考を揺さぶり続ける壮大な一冊に仕上がっている。

単純な未来予測を超えて

著者は、個別の事象に関する単純な未来予測ではなく、全体を俯瞰し、非連続な変化も考慮に入れた「未来思考」の必要性を説く。その鍵となるのは、構造や関係性、因果関係を理解することだという。特に興味深いのは、世界の変貌と個人の変化を一つの大きなマトリックス図の上に描き出そうとしている点だ。世界の統合化を牽引するエリート層とそれへの反発がポピュリズムの源泉の一つであることはよく知られているが、著者はデジタル空間という要因も織り込み、より複層的な議論を展開している。

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2045年までの激変を展望

本書の後半では、2045年までに世界が経験するであろう激変を考察する。フィジカルAIなどAIの危険なまでの隆盛や、プラットフォームを掌握する民間企業の強大な力がテーマとなる。その上で、一部の国家や大企業といった大きな権力が中心となる世界と、より分散化された主体が力を取り戻す世界という二つのシナリオを提示する。

暗くなりがちな未来の見通しに対し、著者はテクノ民主主義や自律分散経済の実現によって明るい展望も開けることを示そうとする。その結論は爽やかな読後感を残す。ただし、求められる政治の役割は極めて大きく、新しい政治を本当に実現できるのかという問いが胸の奥に残る。価格は2200円(税別)。

評者プロフィール

佐橋亮(さはし・りょう)氏は1978年生まれの東京大学教授。東アジアの国際関係や国際秩序を中心に研究する国際政治学者。主な著書に『共存の模索 アメリカと「2つの中国」の冷戦史』(勁草書房)、『米中対立』(中公新書)などがある。

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