父と同じ年齢で新たな一歩
上方の落語家、桂春蝶さん(51)が、プロ野球・阪神タイガースの熱烈なファンで1993年に51歳で亡くなった父で先代の二代目桂春蝶さんへの思いを込めた新作落語「それゆけ、タイガース!」を作った。父と同じ年齢になり、「ここからは、おやじが歩いていない道を行くことになる。見守ってくれているおやじにささげる一席にしたい」と話す。(山口佐和子)
筋金入りの阪神ファンだった父
軽妙な語り口が人気だった父は、筋金入りの阪神ファンだった。「試合に勝ったら機嫌が良く、負けると荒れる。家族にとって勝敗は死活問題でした」と春蝶さんは振り返る。幼い頃はよく手を引かれて甲子園球場に観戦に行った。自宅でテレビ中継を見ていても、阪神の選手がホームランを打てば、両親と妹と一緒に選手がダイヤモンドを1周する姿をまねてリビング、台所、玄関を走り回った。
父の死がきっかけで落語家に
春蝶さんは父の死を機に落語家を志し、94年、父も師事した三代目桂春団治さん(2016年死去)に入門。2009年に父の名を継ぎ、三代目春蝶を襲名した。今回の落語は、自身が戦争や命の尊さを題材に手がけてきた新作シリーズの一環として作った。ストーリーに父は登場しないが、「タイガースを落語にすることで、おやじと語り合えるんじゃないか」と考えたという。
戦前から85年までを描く物語
物語は、戦前から阪神が初の日本一に輝く1985年までの大阪の町工場を舞台に、阪神ファンの親子3代の姿を描く。戦争や高度経済成長の波に翻弄される登場人物は、負け続けるチームに自身を重ね、「負けた方がしみじみするんや」とこぼしながら応援し続ける。
父の言葉が落語に生きる
球団は2023年に日本一、25年にリーグ優勝し、今シーズンも好調だが、春蝶さんが子どもだった頃は成績が低迷することが多く、生前の父に「なんでこんな弱いチームを応援するの」と尋ねたことがある。すると、「できの悪い息子を応援するのと一緒や。頼りないほど、見放すわけにはいかんのや」と返ってきた。落語には、父の愛情に触れた思い出もにじませるつもりだ。
落語会で披露
「野球ファンじゃなくても楽しめる泣き笑いの落語にしたい。おやじがどこかで聴いていて、『ようがんばってると思うで』と言ってくれれば、それだけでいい」と春蝶さん。6月13、14、20、21日に扇町ミュージアムキューブ(大阪市北区)で開く落語会で披露する。



