長崎県時津町が「ワイン特区」に認定、地元ブドウで醸造の道開く
ブドウの産地として知られる長崎県時津町が、国の構造改革特区制度を活用した「ワイン特区」に認定されました。これにより、酒税法の基準より少量の果実酒を製造できるようになり、町内でのワイン生産のハードルが大幅に低下します。従来はブドウの加工を他地域に委ねる「委託醸造」が主流でしたが、今後は地元での醸造が促進される見込みです。
特区認定で製造数量の基準緩和
時津町は昨年12月、町内全域がワイン特区として認定されました。これに伴い、ブドウを原料とした果実酒の製造において、酒類製造免許の年間最低製造数量が「6キロ・リットル以上」から「2キロ・リットル以上」に引き下げられました。この規制緩和により、小規模生産者でもワイン製造に参入しやすくなり、地元経済の活性化が期待されています。
県内では、2023年に南島原市がワイン・リキュール特区に、また佐世保市がリキュール特区、対馬市がどぶろく特区として認定されるなど、地域特性を生かした特区制度の活用が進んでいます。時津町の認定は、こうした流れをさらに加速させるものです。
生産者の意気込みと取り組み
ワイン特区の認定を機に、製造を始める意欲を見せているのが、地元のブドウ農家である森康博さん(61)です。森さんは、巨峰やシャインマスカットなどのブドウを生産しており、父から受け継いだ農場を経営しています。時津町のブドウは、大村湾の潮風と長い日照時間により、香りや甘みが強いのが特徴です。
森さんは現在、作業場をワインの加工場に改築中で、海外から圧搾機を輸入する計画を進めています。これまでワインを造る際にはブドウを出荷して委託醸造に頼っていましたが、特区認定により、地元での一貫生産が可能になります。森さんは「時津のワインを知ってもらいたい」と語り、今後はスパークリングワインなど多様な商品開発にも取り組む考えです。
町の戦略と期待
時津町戦略推進課によると、町内で生産されたワインをふるさと納税の返礼品として活用するなど、周知を図っていく方針です。担当者は「耕作放棄地が増えている中、ワイン用のブドウの生産が増えれば、土地の活用も進み、1次産業の活性化につながる」と期待を寄せています。
時津町では戦後にブドウ生産が始まり、最盛期には約100人の農家がいたとされますが、近年は減少傾向にあります。ワイン特区の認定は、こうした状況を打破し、地域資源を生かした新たな産業創出を目指す取り組みです。森さんは「ワインを通じて、時津のブドウが広まってほしい」と話し、地元の魅力発信に力を入れています。



