5月に入り田植え期を迎える中、中東情勢の緊迫化を受けた原油価格の高騰が、静岡県の米農家にも深刻な影響を及ぼしている。農業機械に欠かせない軽油やガソリンの価格上昇が、農家の経営を圧迫しているのだ。「これからが怖い」と語る農家もおり、先行きの見えない不安が広がっている。
燃料費の負担増に農家が悲鳴
浜松市中央区深萩町の米農家、藤松泰通さん(45)は、隣接する同区和地町内の約3.3ヘクタール(サッカーコート約5面分)の農地で米を栽培し、ほぼ1人で管理している。草刈り機や田植え機にはガソリン、トラクターには軽油が必要で、田植えの時期だけで燃料費は数万円にのぼる。藤松さんは「これからが怖い」と語り、エンジンのかけっぱなしを避けるなどの節約に努めるが、「大した効果はないだろう」と見込む。
農機市場の縮小も追い打ち
燃料費の高騰に加え、農家の減少や高齢化で農機の国内市場が縮小している。今年3月には、松江市の大手農機メーカー「三菱マヒンドラ農機」が農機事業から撤退すると発表した。藤松さんも同社製のトラクターを使用しており、「メンテナンスができなくなれば買い替えるしかない」と、さらなるコスト増を懸念する。
農家の現状を訴える活動
藤松さんは、農家の厳しい現状を訴えようと、トラクターで東京都内をデモ行進する「令和の百姓一揆」に昨年から参加。今年4月には、浜松市内で食料安全保障の専門家を招いた講演会を開催した。「米は日本人の主食で生きる糧になるもの。作り続けることに大きな意義がある」と意気込む。
肥料コストの高騰も懸念
浜松産のブランド米「やら米か」を育てる会社の代表、川合史朗さん(68)は、輸入肥料の高騰を不安視する。国連貿易開発会議などによると、世界の海上での肥料取引の3分の1が中東のホルムズ海峡を経由する。川合さんの会社では100ヘクタールの農地で、窒素やリン酸、カリなどの海外産肥料を使用し、年間の肥料代は1000万円近くに上る。今年の分は昨年12月に仕入れたが、来年以降の見通しは立っていない。
コスト増とコメ離れのジレンマ
栽培コストの増加が見込まれる一方で、米価の高騰は消費者の「コメ離れ」を招く恐れもある。川合さんは「ある程度の米価で安定してくれたら助かるが…」と頭を悩ませている。



