経済的に恵まれない家庭の中高生を支援する「きずな育英基金」が、金銭面の援助に加え、同じ境遇の子どもたちが交流する機会を設け、成長を後押ししている。同基金を利用して大学などに進学した奨学生は、2013年の発足から約250人に上る。設立した弁護士の山田庸男さん(82)は「奨学生たちは逆境にも負けず、社会の一翼を担う人材に育っている」と語る。
私財4億円を投じて設立
同基金の支援対象は、ひとり親家庭や児童福祉施設で生活する府内の中学2年生から高校3年生。塾通いやスポーツ・芸術の習い事にかかる費用を1人当たり年間30万~50万円支援する。毎年春と秋に計20人程度を募集し、これまでに難関大学への進学者や研究者として活躍する人材を輩出してきた。
「家庭環境を理由に、夢や進路を諦めてほしくない」。私財4億円を投じて同基金を設立し、運営する公益財団法人の代表理事を務める山田さんはそう語る。背景には自身の苦労した生い立ちがある。幼い頃に父親を戦争で亡くし、母親は体が弱く、山田さんは小学生の頃から新聞配達をして家計を支えた。一時は高校進学を諦めかけたが、中学の担任が紹介した奨学金制度を利用して商業高校に進学。卒業後は営業マンとして働きながら大学で法律を学び弁護士となり、2007年度には大阪弁護士会の会長を務めた。
「母からは『母子家庭で貧乏は当たり前。ただし、心の貧乏はするな』と聞いて育った。生徒の力だけではどうにもならない金銭面は助けてあげたい」と山田さんは話す。
仲間と出会えた喜び
厚生労働省の2022年国民生活基礎調査によると、「母子世帯」の年間総所得の平均は328万円で、「児童のいる世帯」の平均(785万円)の4割程度にとどまる。アルバイトやパートなどの非正規雇用に従事する母親も多く、仕事と家事、子育てを一人で抱える困難さがうかがえる。
山田さんは経済的支援のほかに、各界の有識者を招いた交流会や奨学生OBも参加する合宿を実施し、子どもの居場所づくりにも力を入れてきた。孤立を防ぎ、リーダーを担う人材になるための素養を身につけてもらうためだ。
高校1年の頃から支援を受け、今春、第一志望の私立大に進学した女性(18)は「遠慮がちな性格だったが、基金のおかげで挑戦心が芽生えた。塾に通えるありがたさを分かち合える仲間と出会えた」と話す。4年間支援を受け、現在国立大医学部に通う男性(23)は「悩みを打ち明けられる先輩の存在は大きかった。患者に寄り添う立派な医者になって恩返しをしたい」と語る。
個人や企業から多額の寄付を受けているといい、山田さんは「その分、夢をつかんでほしい」と奨学生たちを見守っている。
秋の奨学生募集
基金は今秋からの奨学生を募集している。問い合わせは基金のホームページ(https://kizuna-ikuei.or.jp/)か、事務局(06-6364-2802)へ。



