地方大学が東京一等地に事務所を構える理由とは?就活支援やブランド戦略を徹底解説
地方大学が東京一等地に事務所を構える理由とは?

中部地方や関西地方に主要キャンパスを置く大学が、東京都心の一等地に事務所を構えるケースが目立っている。オフィス賃料の上昇傾向を受け、事務所閉鎖に踏み切る大学がある一方で、都心に拠点を維持する意義とは何か。取材を進めると、在学生のサポートや大学のブランディングなど、各大学がそれぞれの「東京戦略」を展開している実態が浮かび上がった。

中部大学:就活やインターンシップの拠点として

高層ビルが立ち並ぶ東京・日本橋の一角に、中部大学(愛知県春日井市)の東京サテライトオフィスがある。スタッフ2名が常駐し、受付近くには就職活動に役立つノウハウ本が並び、待合ラウンジには個人作業に集中できる机も用意されている。年間延べ約400人の学生や教職員が利用している。

2026年3月下旬の取材時は、2027年卒業見込みの学生向けの就職活動が解禁されたばかり。オフィスには首都圏企業への就職を希望する学生の姿があった。4年生の山本大夢さんは「スタッフの方と話すと緊張がほぐれ、リラックスして面談に臨める」と笑顔を見せた。

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中部大学が現在の日本橋に移転したのは2012年。1996年から都心にオフィスを構え続ける理由について、所長を務める同大理事・事務統括本部長の垣立昌寛さんは「就活やインターンシップで東京を訪れる学生の支援の一環」と説明する。コロナ禍で増えたリモート面接は依然として行われているが、近年は対面での面接や説明会も増加傾向にある。「夜行バスで上京した際に、ここでスーツに着替えたり、面接前に仮眠を取ったりできる」と垣立さん。今後も学生の声を反映し、事務所の機能拡充を検討している。

日本福祉大学:通信制学生への対面支援

東京のオフィスを通信制学生のスクーリング(対面授業)のために開設しているケースもある。日本福祉大学(同県美浜町)は2024年、東京サテライトを有楽町駅から徒歩1分の好アクセスなビルに移転した。精神保健福祉士などの受験資格が得られる通信教育部を持ち、全国に約6000人が在籍。うち約3割が首都圏在住だ。担当の榊原裕文さんは「受験資格を得るにはスクーリングが必須。交通の利便性などからこの場所に決まった」と明かす。

東京サテライトの存在は大学の事業展開にも貢献している。現場で働く福祉関係職員のリスキリング(学び直し)のため、サテライトで定期的に研修会を開催。榊原さんは「対面の場があることで、参加者同士の仲間づくりにも役立つ。利用者には重宝されている」と語る。

京都産業大学:ブランディングと志願者獲得を目指して再開

大学のブランディング強化や志願者数の増加を目指し、一度閉鎖した東京事務所を2025年に再開したのが京都産業大学(京都市)。官公庁に近い虎ノ門駅近くのビルにオフィスを構えた。

東京オフィス課長の守田章太郎さんによると、インバウンド(訪日客)の増加で京都市内の宿泊施設が予約困難になっている。「高校の修学旅行先として京都を選べなくなった」という。これまでは旅程に大学のキャンパスツアーなどが組み込まれる事例があっただけに、首都圏の高校生にアピールできる機会が減少した。

東京にいながら京都のキャンパスを体験できるよう、仮想現実(VR)機器を使った進路相談会の開催も検討中。「京産大は東京ではマイナーな大学。この拠点から少しずつ知名度を上げていきたい」と語った。

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専門家解説:都心一等地に構える三つの利点

地方大学が都心一等地に事務所を構える背景について、大学経営に詳しいベネッセ教育総合研究所の小村俊平理事長は「社会人を含めた学生の募集と、就職支援、情報収集の三つの狙いがある」と分析する。

東京駅や虎ノ門駅、品川駅に近い田町駅周辺に事務所を開くケースが多いという。三つの狙いの中で重要視されるのが「情報収集」だ。「東京を起点に物事が動くことは多いが、その情報がメディアに出回った段階では遅い。いち早く情報をつかんだり、自ら仕掛けたりするために、東京に拠点を持つ利点は大きい」と指摘する。

小村さんは「規模が小さくても拠点を構え続ける必要性はある」とし、「少子化時代、それぞれの地方市場だけでは経営面などが今後さらに厳しくなる。さまざまな関係を構築できる渉外役を置けるかどうかは、大学の生き残りにも影響するのではないか」と見通しを語った。