犬猫の殺処分率が1割台に大幅減少 10年前の4分の1に
自治体が保護した犬や猫の扱いが大きく変化しています。直近の殺処分率は1割台にまで低下し、10年前の4分の1の水準となりました。中部地方の自治体では、譲渡を目的とした施設の整備を積極的に進め、殺処分を限りなくゼロに近づける取り組みが継続的に行われています。
愛知県での譲渡イベントと新施設計画
4月上旬、愛知県半田市の県動物愛護センター知多支所では、保護犬を譲渡するイベントが開催されました。雑種の子犬2匹が参加者の前に姿を見せると、来場した6組の家族が職員の説明に真剣に耳を傾けていました。
生後約3カ月の雄の子犬を引き取ったのは、名古屋市熱田区の松本祐子さん(45歳)一家です。家族会議を経て「せっかくなら困っている犬を救いたい」と保護犬を選択。数年前から犬を飼いたがっていた長女の佳乃さん(11歳)は「名前は幸福の『フク』にしたい。いっぱい散歩に行こうね」と新たな家族となった子犬を見つめました。
愛知県は現在、豊田市の本所と一宮、半田、豊橋各市にある3支所で保護犬・猫に対応していますが、いずれも築30年以上が経過し老朽化が進んでいます。
さらに譲渡を促進するため、県は1月に名古屋市に隣接する尾張旭市の県有地に「譲渡推進センター(仮称)」を新設する計画を発表しました。2032年度の供用開始を目指す新施設では、空調設備を備えた個室で1匹ずつ管理し、来場者が犬や猫を落ち着いて見学できるスペースを設ける予定です。
中部地方各県の譲渡推進施設
同様の施設は他県にも整備されています。三重県では2017年、津市に譲渡特化型の県動物愛護推進センター「あすまいる」を中部地方で初めて設置しました。予約制で広く譲渡の機会を提供しており、譲り受けた飼い主が飼育を放棄して再び保護されることを防ぐため、予約時と譲渡当日に電話や対面で厳正な面談を行い適性を判断しています。
静岡県も昨年11月、三重県の施設を参考に、富士市に2100平方メートルのドッグランを併設した譲渡施設「しっぽのバトン」をオープンさせました。
市独自の取り組みと官民連携
県だけではなく、市独自の取り組みも活発化しています。岐阜市は地元の動物愛護団体と連携して譲渡などを推進し、2025年度の1年間で、中核市としては初めて自然死などを除いた犬猫の殺処分ゼロを達成しました。
名古屋市は今年1月から2月にかけて、ホームセンターのカインズや流通大手のアマゾンなどの民間企業と連携した全国初の啓発イベントを開催。約1カ月にわたり、市内各所で譲渡会や情報発信を行いました。
2024年度の殺処分数は約6800匹 全体の2割弱
自治体による犬猫の殺処分数は減少傾向が続いています。法改正や動物愛護意識の高まりを受け、飼い主が飼育を放棄したことによる引き取り数が減少していることに加え、保護犬・猫の譲渡が急速に増加してきたことが背景にあります。
環境省のデータによると、2024年度に全国の自治体が引き取った犬猫数は約3万9400匹でした。このうち8割以上が返還または譲渡され、残りの約6800匹が殺処分されました。
動物愛護管理法が施行された1974年には、狂犬病対策として120万匹以上が殺処分されました。1999年以降、4度にわたる法改正で、飼い主が責任を全うする「終生飼養」や自治体の譲渡努力義務が明文化され、譲渡の流れが全国的に広がりました。
専門家の見解と今後の課題
ペットに関する正しい知識や飼育法を伝える「愛玩動物飼養管理士」の榊原邦子さん(愛知県半田市在住)は、殺処分の減少について「各地で命の救済が進んでいる」と評価しています。職員や予算に限りがある行政の負担軽減に向け、今後も犬猫の引き取り数を減らす対策強化が必要だと指摘。自身も「飼い主の心構えや不妊・去勢手術の重要性を伝え続けたい」と語りました。
【保護犬・保護猫について】
動物愛護管理法などに基づき、自治体の動物愛護センターや保健所に保護された犬や猫を指します。野犬や野良猫同士が交配して生まれた乳飲み子のほか、飼い主の飼育放棄や多頭飼育で行き場を失った成犬、成猫などが引き取られます。引き取り手がなかった場合や、人に危害を加える恐れがある場合に殺処分されることがあります。



