三重県桑名市多度町の山林で、国の天然記念物に指定されている希少樹木イヌナシの若木が4月に開花した。成木は毎年花をつけるが、2004年に保全活動が始まって以降、若木の開花は初めて。実から新たな木が育てば、自然な世代交代「天然更新」が実現する。
待望の開花に喜び
長年保全活動に携わる市職員の石神教親さん(51)は「ずっと心待ちにしていた花がついに咲いた」と感動を語る。この山林は「多度のイヌナシ自生地」として1956年に県の天然記念物、2010年に国の天然記念物に指定。約3000平方メートルの谷筋に樹齢50年以上の成木40本が群生する。イヌナシはバラ科ナシ属で、自生は愛知、岐阜、三重の3県のみ。多度は最大の群生地として知られる。
若木の成長と課題
開花したのは高さ約2メートルの若木で、発芽から数年とみられる。4月11日、石神さんが白い花を発見し、共に活動する「多度自然育成の会」のメンバーと喜びを分かち合った。保全活動では他の草木を刈り、シカの食害を防ぐネットを設置。2世の若木は数十本に増えたが、長く花をつけず「原因不明でモヤモヤしていた」という。
故人の思いも胸に
石神さんが「ぜひ花を見せたかった」と語るのは、元高校教員で県の生物多様性保全アドバイザーとして活動を牽引した葛山博次さん。昨年4月の活動では元気に草刈りをしていたが、6月に93歳で死去した。石神さんは「一番心待ちにしていたのは葛山さんだろう」と悼む。
開花した若木には数十の実がつき、秋に落下して発芽するとみられる。天然更新に向け、石神さんは「大きな一歩。今後も見守りたい」と話す。



