大阪府富田林市の近鉄・富田林西口駅近くに、昨年、あんこを主役にした創作和菓子店「あんこ暮らし」がオープンした。店主の佐古誠治さん(57)は、「あんこを日常的に食べてほしい」との願いを込めてこの店を開いた。どら焼きなど工夫を凝らした商品の数々が人気を集めている。
公務員からあんこの世界へ
佐古さんはもともと和菓子が特に好きだったわけではなく、小豆農家をしていたわけでもない。公務員として約15年間働いた後、飲食店の新規展開を考えながら和菓子を食べていた時、ふとあんこが目に留まったという。
あんこはたんぱく質や食物繊維が豊富で、むくみ予防や整腸作用も期待できる。古くから和菓子の材料として親しまれている一方で、あんこを表現する言葉といえば「上品な甘さ」や「甘すぎない」といったものばかり。佐古さんは、あんこについて自分も含めてあまり知られていないのではないかと感じた。
調べていくうちに、香りや食感、味の余韻など、あんこの奥深さを知った。大きな可能性を感じ、飲食店の新規事業として大阪市内に店を開いたが、うまくいかずに失敗。しかし、「やっていることは間違っていない。まだやりきっていない」と、もう一度あんこの専門店を開く決意をした。
富田林市内で空き物件を見つけ、ゆったりとした空気感が南河内出身の自分に合うと考え、開店場所に選んだ。ようやく自分を表現できる場所に出会えたという思いだった。
看板商品「ベードラ」
看板商品は、米粉を使ったどら焼き「ベードラ」だ。小麦アレルギーの人も食べられるよう、小麦粉を使わずに作っている。開発には苦労したが、「生まれて初めてどら焼きを食べました」と言ってくれた人もいて、うれしく思うと同時に「食の障壁」をなくすという目標も達成でき、やりがいを感じた。
佐古さんは朝から商品を並べるため、前日夕方から小豆を炊いて練る手作業を行っている。「粒感」を出すためには粒が壊れないようにしなければならず、機械にはできない繊細な作業だ。かんだ時に口の中で初めて風味が飛び出すのが、佐古さんが提供したいあんこなのだ。
あんこを主役にした新提案
あんこを主役にし、そのまま食べてほしいと考えて販売しているのが、カップ入りの「そのままあんこ」。味や食感を直接感じてもらえるはずだ。
新しい食べ方を提案したいという思いから、この春からはあんこを使ったチョコレート「ABC(Azuki Based Chocolate)」の販売を始めた。あんこを9割、カカオマスを1割使っており、甘さ控えめのあっさりとしたチョコといった味わいだ。
「あんこ暮らし」に込めた願い
「あんこ暮らし」という店名には、「あんこのある暮らしを創造するきっかけになりたい」との願いが込められている。何かのご褒美でもなく、誰かから贈られるものでもなく、毎日の食卓に自然と並ぶのが理想だ。
そのためにも、魅力ある新しいあんこの食べ方をどんどん提案し、口に運ぶ機会を増やしていく。あんこがもっと日常に溶け込んでほしいと佐古さんは語る。
佐古さんは大阪狭山市出身。「餡創家(あんそうか)」を名乗り、小豆の粒感や風味を生かすことを大切にしている。「ベードラ」は、異なる食感を楽しめる「つぶつぶピーナッツあんこ」や「赤ワインあんこ&クリームチーズ」など4種類を販売。営業時間は午前11時~午後7時だが、売り切れ次第閉店。水、木曜定休。店頭での販売に加え、2日前まで予約を受け付けている。問い合わせは「あんこ暮らし」(0721-21-1558)へ。



