富山地方鉄道は28日、2026年3月期の単体決算を発表した。営業損益は7984万円の赤字で7期連続の赤字となったが、前期の4億2545万円から大幅に改善した。運賃値上げや観光客増加が寄与したものの、利用客数は新型コロナウイルス禍前の水準に戻らず、厳しい経営環境が続いている。
営業収益は増加、鉄道事業の赤字は圧縮
営業収益は64億3331万円で、前期比4%増加した。2025年4月に鉄道と市内電車で29年ぶりに運賃値上げを実施したことが増収につながった。営業損益は7984万円の赤字だが、国の補助金などを含めた最終利益は3億4943万円の黒字を確保した。
鉄道事業の営業収益は16億4277万円(同7%増)で、運賃値上げに加え、立山黒部アルペンルートなどを目的地とする観光客の増加が収益を押し上げた。観光客は乗車距離が長く、特急も利用するため、単価が高い。一方、営業損益は6億6903万円の赤字で、国の補助金を加味すると4億6256万円の赤字。前期の8億3892万円から改善したが、電気料金やレールなどの部品価格の上昇が続き、利用客数もコロナ前の水準には戻っていない。軌道事業とバス事業は黒字を確保した。
中田社長「観光客増加が唯一の策」
中田邦彦社長は鉄道事業について「運賃改定の効果が大きい。観光客増加は人員ベースでは小さいが単価が高く、ここが伸びることが増収につなげる唯一の策だ」と述べた。また、「全体として黒字なのは設備投資を控えて費用を抑えているからで、設備投資をすると会社全体が赤字になる」と実情を訴えた。
決算発表を受け、新田知事は定例記者会見で「観光客の利用促進が図られ、引き続き収入増に結びつくのでは」と期待感を示した。
沿線存廃議論、今年度中の方向性を要求
赤字が続く鉄道線では、本線(電鉄富山―宇奈月温泉)の不採算区間を巡り、県や沿線自治体で存廃の議論が続いている。中田社長は「今年度中に何としても方向性を出していただきたい」と強く促した。
地鉄は今年度(2027年3月期)の赤字分を県、沿線自治体と3分の1ずつ負担することで、赤字区間の廃線手続きを今年度に限り先送りすることで合意。5月には県が主導する全線維持を見据えた検討会が発足したが、多額の費用負担を巡り自治体間の足並みはそろっていない。
利用客数の伸び悩みが最大の課題
中田社長は利用客数の伸び悩みを最大の課題に挙げ、行政側に改善に向けた議論を求めた。昨年度、立山線や不二越・上滝線を含めた全線の利用者数は、観光目的では前年を上回ったが、全体の9割を占める通勤・通学などの住民利用は横ばいで、コロナ前(2018年度)の水準には1割ほど届いていない。全線維持を前提とした国の再構築事業に認められるには、新型車両の導入や定期料金の値下げなど利便性向上策を盛り込んだ計画案が不可欠だ。7月には2回目の検討会が開かれる予定で、議論の本格化が期待される。



