人気声優の津田健次郎氏が、生成AI(人工知能)技術を使って自身の声を無断で模倣した動画が動画投稿アプリ「TikTok」に投稿されているとして、運営会社を相手取り、東京地方裁判所に訴訟を提起した。津田氏は、違法な動画投稿によって声優としての「声の権利」が侵害されていると主張している。
「呪術廻戦」声優の声が悪用される
津田氏は、アニメ「呪術廻戦」の七海建人役などで知られる人気声優で、その低く渋みのある特徴的な声で多くのファンを持つ。訴状によると、問題のアカウントは2024年7月以降、津田氏の声を模したナレーションで都市伝説や心霊現象を語る動画を少なくとも188件投稿。フォロワー数は2025年11月時点で約21万人に達していた。
収益と匿名性の問題
津田氏側は、このアカウントが動画の再生数に応じて月額50万~75万円の収益を得ていたと主張。2025年8月、東京地裁がTikTok側に投稿者の情報開示を命じたが、開示された情報は古く、特定には至らなかったという。
津田氏は2025年11月に提訴。一連の動画が、あたかも津田氏本人がナレーションを担当しているかのような誤解を生じさせるとし、不正競争防止法(有名ブランドなどの無断利用や便乗を禁じる法律)に違反すると主張。さらに、著名人が自身の肖像などについて商業的価値を独占できる「パブリシティ権」の侵害も訴えている。
TikTok側の反論と今後の審理
一方、TikTok側は答弁書で、問題の音声が「津田氏と『同一の声』かどうかは客観的に明らかではない」などと反論し、請求を退けるよう求めている。現在、訴訟では双方の主張を整理する非公開の手続きが続いている。
日本では法律上、声は著作権の対象となっておらず、権利が明確に定められていない。生成AIの普及に伴い、音声や動画を容易に作成できる環境が整う中、今回の地裁での審理は注目を集めている。
法務省も検討開始
こうした状況を受け、法務省は2025年4月から有識者による検討会を開始。生成AIを使った肖像や声の無断利用が深刻な問題となっているとして、民事上の責任を問える場合を整理し、夏ごろに結果を公表する方針だ。



