連載:そもそも解説 視点・解説
DNA型鑑定不正、佐賀県警で何が起きたのか 原因と再発防止策は?
2026年6月4日 11時00分
編集委員・吉田伸八 渕沢貴子 光墨祥吾
佐賀県警本部に特別監察に入る警察庁の担当官ら=2025年10月8日午前9時17分、佐賀市、岡田将平撮影
佐賀県警科学捜査研究所(科捜研)の元技術職員がDNA型鑑定で不正を繰り返した問題があり、警察庁の特別監察の報告書がまとまりました。どういう不正があり、何がわかったのでしょうか。ポイントをQ&A方式で紹介します。
この記事でわかること
- DNA型鑑定とは、佐賀県警で何が起きたか
- 不正の公表からの経過は
- 特別監察でわかったこと
- 不正の要因はどこに
- 専門家はどう見ているか、影響は
①DNA型鑑定とは、佐賀県警科捜研で何が起きた?
「565京(けい)人に1人」を識別する――。
捜査に不可欠で、未解決事件が解決するきっかけにもなるDNA型鑑定。その信頼が揺らぎかねない事態が佐賀県警で起きた。
発覚は2024年10月。上司が書類の不備に気づいたことがきっかけだった。その後、科学捜査研究所の冨永剛弘・元主査(43)=懲戒免職=による数々の不正が明らかになっていく。
DNA型鑑定は、人の細胞内にあるDNA(デオキシリボ核酸)という物質の情報から個人を識別する。
人の血液や精液、唾液(だえき)、皮膚などから採れ、その検査法や鑑定技術は進歩を続けてきた。
鑑定は1992年に全国の警察で導入され、2020~24年の5年間では毎年26万件ほど実施している。
警察庁のデータベースには、容疑者や現場に遺留された資料のDNA型が登録され、容疑者の割り出しや別の事件への関与がないかの確認に活用されている。
佐賀県警の科捜研では元主査を含め、5~6人で鑑定を実施。元主査は、殺人未遂や窃盗、詐欺といった多種多様な事件のほか、変死体の事件性の判断や身元確認のための鑑定も担当した。
県警の調査では、元主査による不正な鑑定は17~24年に130件。鑑定していないのに鑑定したように装って「DNA型は検出されなかった」などと報告した事案や、ガーゼ片などの資料を紛失して新品のガーゼ片を返還するなどの事案があった。
②不正の公表からの経緯は?
佐賀県警は2025年9月、不正な鑑定があったことを公表すると同時に、元主査を懲戒免職処分とし、虚偽有印公文書作成容疑などで書類送検した。
こうした状況を受け、警察庁は、警察のDNA型鑑定全体に対する国民の信頼を損なう事態だとして、異例の特別監察を決定した。25年10月8日から開始し、約8カ月にわたり調査してきた。
特別監察は35人態勢で、警察庁の付属機関「科学警察研究所」のDNA型鑑定担当のトップら専門家が加わり、元主査や他の県警職員ら計17人(退職者を含む)からの聞き取りや、関係書類やデータの確認などを進めた。外部の有識者として、大学の名誉教授2人からも意見を聞きながら実施したという。
この間、佐賀地検は2月27日、元主査を虚偽有印公文書作成・同行使、証拠隠滅の罪で在宅起訴した。公判の日程は決まっていない。
佐賀県弁護士会や日本弁護士連合会は「身内の調査は信用に値しない」などとして、第三者機関による調査を強く求めた。これに対し警察庁は特別監察について「客観的かつ厳正な調査を尽くした」と説明している。
③特別監察で何をして何がわかった?
2026年6月4日、警察庁…
この記事は有料記事です。残り2501文字
有料会員になると続きをお読みいただけます



