街中で小銭があれば気軽に利用できる「コインシャワー」が、東京都杉並区で減少している。自宅に風呂がない人だけでなく、仕事帰りやジョギング後の汗を流す場としても重宝されてきた。しかし、年収200万円台で暮らす男性(47)が東京新聞に窮状を訴え、その実態が浮かび上がった。本記事では、コインシャワーの現状と利用者の声を詳しく伝える。
コインシャワーの現状と利用者の声
「さわやかランド梅里店」の営業実態
5月上旬、杉並区にあるコインランドリー・シャワー「さわやかランド梅里店」を訪れた。洗濯機が並ぶ奥にコインシャワー3室が設置されており、店の看板にあるサルの絵から「モンキーシャワー」とも呼ばれている。タオルとせっけんのセットが各100円で購入できる自動販売機は古びた趣があり、お笑いコンビ・オードリーの春日俊彰さんや若林正恭さんなどの有名人サインも飾られている。
記者も初めてコインシャワーを体験した。1人がぎりぎり入れるブースで200円を投入すると、扉上部の「使用中」ランプが点灯し、6分間湯が流れ出た。創業当時から使われているこのランプも、歴史を感じさせる。
コインシャワーの歴史と役割
コインシャワーは高速道路のサービスエリアや海水浴場でもおなじみだ。メーカーのタニモト(大阪府)によると、1980年代後半の「朝シャン」ブームで普及。熱源があり洗濯中に体を洗えることから、コインランドリーに併設されるケースが増えた。梅里店は1975年開業で、前店主の高齢化に伴い、現在の60代女性店主が2010年ごろに引き継いだ。年中無休24時間営業で、外国人や若い女性も訪れる。銭湯よりプライバシーが守れる個室を求める人や、家賃節約のため風呂なしアパートに住む人も利用している。
減少するコインシャワーと経営課題
都内の施設数減少
東京都のデータによると、2015年度から10年間に保健所へ営業届け出があった施設数は、2021、2022年度の最多80件に対し、2024年度は最少の68件となった。梅里店でも燃料費高騰でガス・水道代がこの2、3年で2割増加。5年前にコインシャワーを閉じた杉並区の小池千治さん(88)は「利用が減り、マナーの悪い客もいて掃除が大変だった。機械の故障もあり、高齢だったので断念した」と振り返る。
経営者の思い
それでも梅里店の店主は「続けるのはお金のためじゃない。ありがとうと言われ、必要とされるから。気軽に利用してもらえたら」と語る。2008年の住宅・土地統計調査では浴室がない住宅は全体の1.4%で、現在も一定数存在する。不動産サイトでは杉並区内でシャワー室ありの家賃が3万4000円からに対し、浴室なしは2万2000円からと、約1万円の差がある。
利用者の訴えと社会的インフラとしての認識
年収200万円台男性の体験
東京新聞に声を寄せた男性は約10年前に失業し、上京して家賃2万円の風呂なしアパートで暮らし始めた。配達など複数の仕事を掛け持ち、最も苦しい時期は年収200万円台半ば。毎日利用しても月6000円ほどで済むコインシャワーに助けられた。しかし、数年で最寄りの3店が相次ぎ閉店・休業。現在は梅里店に自転車で15分かけて通い、1日2回利用することもある。
男性は「利用しなければ目がいかず、政治家や役所の人はぴんと来ないのかも。でも、コインシャワーは社会的インフラ。公的な支援をもっと検討してほしい」と訴える。その声は、都市部の生活インフラの一端を担う施設の存続について、改めて考えるきっかけを与えている。



