企業成長指針 株主偏重を改め真の変革を進めよ
企業成長指針 株主偏重を改め変革進めよ

企業成長指針 株主偏重を改め変革進めよ

欧米企業と比較して収益性が低いという日本企業の長年の課題には改善の兆しが見られるものの、その結果として株主への還元ばかりが重視される傾向が強まっている。賃上げが十分に進まず、設備投資も伸び悩み、株の配当だけが増加する状況では、国民は経済成長の恩恵を実感できない。経営者も投資家も、この状況を打破するための変革を進める必要がある。

伊藤レポートの成果と課題

経済産業省が企業指針を策定したのは2014年のことだ。バブル経済崩壊後、20年以上にわたって低収益に甘んじてきた日本企業の体質を改善するため、一橋大学大学院教授だった伊藤邦雄氏を中心にまとめられたこの指針は「伊藤レポート」とも呼ばれ、その後の経営改革論議に大きな影響を与えた。

当時、代表的な指標で見ると、日本企業の収益力は欧米企業のほぼ半分に過ぎなかった。その後、さまざまな改革が進められ、日本企業の収益性自体は確かに向上した。2013年に73兆円だった経常利益は2024年には131兆円にまで増加。1万円台半ばだった日経平均株価も、今年には6万6000円を超える水準に達している。

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しかし、研究開発や設備投資、人材育成などの「成長投資」はこの間ほぼ横ばいで推移している。対照的に、自社株買いは3兆円から17兆円へ、配当は8兆円から25兆円へと大幅に拡大した。国内投資の少なさは、成長が見込める海外に重点を置いているためと指摘されてきたが、経済産業省の分析によれば、海外投資を含めても成長投資の水準は欧米に劣っている。

成長投資の不足が招くリスク

企業の売上高に対する成長投資の比率は約18%で、30%近い欧米企業との差は大きい。このままでは日本経済の強化や国民の豊かさの実現は難しい。2014年の指針で重視された指標は、自己資本利益率(ROE)だった。自社株を買い入れて消却すれば、計算上は分母の自己資本が減るためROEは改善する。企業が安易に自社株買いに走ったことは、反省すべき点だろう。

新指針が求めるバランス

今回、経済産業省は経営改革論議を仕切り直すため、企業や投資家向けの新たな指針を公表した。成長投資の少なさや、投資と株主還元のバランスが取れていないという分析を踏まえ、成長投資を大胆に拡大するよう求めている。投資家に対しては、単一の指標に基づく形式的な判断を避け、企業の成長性を見極めて投資するよう促した。政府は事業再編を円滑に進めるため、税制優遇や金融支援を検討する方針だ。

企業は新指針が指摘した課題を直視し、これまでの経営のあり方を点検し直し、真の成長につながる方策を検討すべきである。

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