横浜市パブコメ、児童生徒の投稿が急増 大人の意見が埋没懸念
神奈川県横浜市教育委員会が2026年5月に公表した「第5期横浜市教育振興基本計画」に関するパブリックコメント(パブコメ)が波紋を広げている。市教委が初めて児童生徒にGIGAスクール端末を活用して意見を募ったところ、投稿数が前回の57倍に激増。文部科学省の広報サイトで「子どもの参画の先進事例」と紹介された一方、一般市民の政策提言が埋没したとの批判が教育関係者から上がっている。
投稿数が57倍、意見数は103倍に
市教委は2025年12月中旬から約1カ月間、第5期教育振興基本計画の素案に対するパブコメを実施。市立小中高校と特別支援学校の児童生徒約1万人に、GIGA端末を通じて「やさしい概要版」と子ども向けリーフレットを配布し、意見投稿を呼びかけた。その結果、総投稿数は9737通(児童生徒の端末から9226通、一般から511通)で、前回2022年の170通から約57倍に増加。意見数は3万6697件(児童生徒の端末から3万5961件、一般から736件)で、前回の354件から約103倍に達した。投稿内容は、給食の改善や授業のわかりやすさ、いじめ防止、教職員の不祥事削減など多岐にわたった。
文科省が先進事例として紹介
文科省は2026年4月、広報情報サイト「ミラメク」で横浜市の取り組みを「子どもを『教育の対象』から『共に創るパートナー』へ」と題して紹介。約3万6000件の子ども意見を集めた点を高く評価した。しかし、パブコメの形骸化を指摘する声も根強い。元特別支援学校教諭の三田政明さん(66)は「夜間中学の拡充といった重要な政策提言が、学校生活に関する大量の感想に埋もれてしまう。パブコメの本来の趣旨がゆがめられる」と危惧する。
市教委「埋没の指摘は当たらない」
市教委の担当者は「児童生徒の意見募集は計画をより良くするための試行。強要にならないよう端末を活用し、自主的な投稿を得た」と説明。約3万6000件の意見は1228ページの別紙一覧で公開し、児童生徒と一般の意見を区分して掲載したため「埋没の指摘は当たらない」と反論する。しかし、現代教育行政研究会代表の前川喜平さんは「一般市民向けのパブコメと同一手続きで児童生徒の意見を募るべきではない。合算すると少数意見が埋もれる。子どもの意見募集は別の形で、生徒会などで議論して集約する場を設けるべきだ」と提言する。
パブコメとは
パブリックコメントは、行政施策に市民の声を反映させる制度。横浜市は実施要綱に基づき、重要な計画や条例の策定前に意見を募る。教育振興基本計画は教育基本法に基づき、国や自治体が教育振興策を総合的・計画的に進めるためのマスタープラン。第5期計画は2026年度から4年間を対象とする。



