深掘り財源は赤字国債なのに「発行増えない」 首相の発信にくすぶる警戒感
中東情勢を受けた物価高に対応する補正予算案をめぐり、高市早苗首相がこだわったのは財政規律に配慮する姿勢だ。背景には、首相の「責任ある積極財政」に疑念を抱く金融市場の存在がある。
こだわった「国債は増えない」
補正予算案の総額3兆1135億円はすべて赤字国債を発行してまかなう。しかし首相は5月25日の会見で「市中への発行総額は増やさずに対応することができるため、国債マーケットに大きな影響を与えることなく実行可能だ」と強調した。
国債を発行するのに、発行総額は増やさないというのはどのような理屈なのか。財務省によると、税収の上ぶれなどにより2025年度の国債発行が計画より3兆円少なく済む見通し。このため、3兆円超の国債を新たに発行しても市場に出回る量は差し引きでほとんど変わらないという。
政府関係者は「首相は金融市場の動向を常に意識している。今回の手法は、財政拡大と市場安定の両立を図る苦心の策だ」と語る。一方、市場関係者からは「発行総額が変わらないとはいえ、新規国債の増発自体が財政規律の緩みと受け止められるリスクがある」との警戒感も聞かれる。
首相はこれまでも「成長なくして財政再建なし」と主張し、積極財政路線を打ち出してきた。しかし、市場では「財政規律を軽視している」との見方が根強く、今回の補正予算案でもその姿勢が問われている。
実際、長期金利はここ数年上昇傾向にあり、国債市場の敏感な反応が続いている。首相のメッセージが市場の信認を得られるかどうかが、今後の財政運営の鍵を握ると言えよう。



