2026年6月1日、2027年春に卒業予定の大学生を対象とした企業の採用選考が正式に解禁された。就職活動(就活)は年々早期化が進み、既に就活生の7割が内々定を獲得している。しかし、企業の採用意欲は3年連続で低下しており、これまでの「売り手市場」は転機を迎えつつある。
AI活用が就活の常識を変える
選考解禁日には、東京都千代田区の第一生命保険本社ビル前で、リクルートスーツに身を包んだ学生の姿が多く見られた。同社は2027年卒の採用を505人と前年より82人減らす予定だ。横浜国立大学4年の男子学生(21)は面接を終え、「緊張したが、うまく話せてほっとしている」と語った。この学生は情報収集や面接での話す内容の整理に人工知能(AI)を活用。「自分自身の言葉で話せるよう、頼りすぎないように心がけた」と述べた。
ルールの形骸化と早期化
政府は経団連などの経済界に対し、学業への配慮から会社説明会は3月1日、採用選考は6月1日に解禁するよう要請している。しかし、企業と学生双方の前倒しが進み、このルールは形骸化している。就職情報会社マイナビの調査によると、4月末時点で内々定を得た学生は70.9%に達し、2026年卒より0.9ポイント、2025年卒より6.6ポイント上昇した。
マイナビの石田力氏は「学生の人気が高い企業は選考を厳しくしており、採用選考のさらなる早期化は考えにくい」と指摘する。
企業の採用意欲低下
今年春、読売新聞が主要企業123社を対象に行ったアンケート調査では、採用人数を「増やす」と回答した企業が19%で、3年連続で減少した。一方、「減らす」と回答した企業は18%で、3年連続で増加した。この背景には、中東情勢の悪化による短期的な経営リスクへの配慮や、新卒採用で「量より質」を重視する動きがあるとみられる。
AIがもたらす光と影
AIは就職戦線に「光と影」をもたらしている。マイナビの2027年卒予定学生調査では、志望動機のチェックや面接対策にAIを活用した割合は84.9%に上り、2024年卒の18.4%から4倍以上に増加した。企業側でも、採用担当者の負担軽減や客観的な選考を目的に「AI面接」を導入するケースが相次いでいる。
一方で、金融大手SBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長は今年3月、業務でのAI活用を念頭に「今度の採用から大幅に減らすことを絶対命令とする。よほど優秀な人材でないと採用するなと言っている」と述べた。読売新聞の調査でも、パナソニックグループが採用抑制につなげたほか、ファミリーマートは生成AI導入による人材配置の柔軟化を図っている。



