NHKが朝の県内ニュース縮小、秋田から不満の声 受信料支払率トップ県で波紋
NHK朝の県内ニュース縮小に秋田から不満の声

東京・渋谷のNHK放送センター。左の建物は、建て替え計画に基づいて2024年に完成した、報道・情報発信の拠点となる情報棟。東北6県でこの春、NHKの県内ニュースが一部“縮小”された。NHKが地域報道の重要性を強調する一方で、身近な地域情報の量を減らしていることに対し、視聴者から不満の声も出ている。(文化部 田辺里咲)

東北6県のニュースひとまとめに切り替え

「どうして秋田からの(朝のニュース)がなくなったのか。とても残念に思います」。5月23日に秋田市内で行われた「視聴者のみなさまと語る会」で、出席した女性からこんな声があがった。このイベントは、視聴者の生の声を聞くことを目的に、NHKの経営委員や執行部のメンバーが年6回以上、全国の放送局のいずれかに出向いて行われており、今回は視聴者が42人も詰めかけた。

冒頭の意見は、NHKが3月末、平日午前7時45分から15分間放送していたニュース番組「おはよう秋田」を、東北の拠点局である仙台放送局から6県のニュースをまとめて放送する「おはよう東北」に切り替えたことに対してのものだ。平日午後0時台、6時台、8時台のニュースは変わらず県独自に放送しているが、視聴者は、朝の重要な情報源の変化は気になっていたようだ。出席していた阿部順一・秋田放送局長は「秋田からの情報もお届けしているが、東北地方のほかの地域の情報も含めているので、秋田の情報が薄まった感がどうしても出てしまうかもしれない」と釈明。「今後も鋭意、どういう伝え方が望ましいのか模索していきたい」とした。

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朝のニュース、県単独は静岡と沖縄のみに

「模索」と言うが、地域ごとのブロック放送である「おはよう東北」が、県域放送である「おはよう秋田」に戻る見込みは薄そうだ。地域放送を巡っては、2000年代前半や22年頃など県域放送の拡大が図られた時期もあったが、現在はブロック放送に統一する傾向にあるとみられる。NHKの平日朝7時45分からのニュースで現在も単独の都道府県で県域放送をしているのは、ブロック放送扱いの北海道を除くと、静岡県と沖縄県のみだ。

この背景には、働き方改革の側面もありそうだ。ある職員によると、地方の放送局でも職員の労働環境に対する見方が厳しくなり、これまでよりも全体の労働時間が短くなっているという。さらにNHKは、2023年10月に実施した受信料の1割値下げの影響で、27年度までに1000億円の支出削減を迫られている。老朽化が進む東京・渋谷の放送センター建て替えも当初計画より大幅に遅らせているような状況の中、地方の労力の不足分を、増員で補うという訳にはいかないという判断なのかもしれない。

東京・渋谷のNHK放送センターで編成を担当する部局に東北の改編理由を尋ねたところ、「地域編成については、各地域の実情に応じて判断している」とのことだった。NHKは近年、取材網を維持しながらも、業務の効率化を図っている。記者経験がある職員は、「限られた人員で決められたニュースの枠を埋めることに終始するよりも、より広い地域に見られるような深い取材に時間を充てたい記者は少なくない」と話す。複数県のニュースをまとめれば、各県が担当する取材数は減る。浮いた分の時間や予算を厳選した取材に充てられる。そうなれば、県内のみならず県外の視聴者の関心も集めるようなニュースとして、ブロック放送や全国放送に流せる――そんなイメージだ。

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会長「地域の魅力が広範囲で共有、良いことでは」

4月の定例記者会見で、井上樹彦会長は東北6県の朝のニュースの改編について、「それぞれの地域の視点で制作したニュース、番組の質と量はほとんど変わっていない」と述べた。さらに、「地域で作ったニュースをブロックや全国で積極的に放送していく。地域の課題や魅力が広い範囲で見られることが、地域の活性化やニュースの共有に広がれば、それは良いことではないか」と語った。ただ、ある職員は、そうした広範囲で見られるニュースが「地域の視聴者の求める情報と一致するかというと、難しい」と話す。「語る会」で意見を述べた女性は、何げない地元の日常の映像を惜しんでいた。

秋田は民放が3局と少なく、ニュース番組への接触機会は都会に比べて少ない。一方、受信料の都道府県別推計世帯支払率が長年全国トップで、2024年度末は全国平均が77.3%の中、96.1%もあった。ほとんどの人々がきっちり受信料を払い、番組を楽しみにしているのだ。そうした人々の叫びに対し、NHKはどう「模索」するのか。注目したい。