英国の劇作家フィリップ・リドリーによるブラックコメディの三人芝居「レディエント・バーミン」が、2026年6月8日から7月5日まで、東京・三軒茶屋のシアタートラムで上演される。リドリー作品をこよなく愛し、英国初演の翌年である2016年に日本初演を手掛けた演出家の白井晃(69)が、「待ち望んでいた」と語る待望の再演が実現。今回、出演者を一新し、欲望の充足と倫理の狭間で迷走する若い妻と夫を、俳優の清原果耶(24)と井之脇海(30)が熱演する。
演出・白井晃が語るリドリー作品の魅力
白井は、「ピッチフォーク・ディズニー」(2002年)を皮切りに、これまでにリドリー作品6作を計8回上演してきた。まさにリドリー演劇の日本への紹介者とも言える存在だ。白井はリドリー作品の魅力について、「人間の深淵にある欲望や狂気、怒り、悲しみなどを、口に手を突っ込んで引きずり出すようなところ」と評する。本作については、「ブラックなコメディでありながら、人間の滑稽さを見事に描いている。普遍的なテーマを持つ作品なので、ぜひ再演したいと思っていた」と力を込める。
あらすじとキャスト
清原と井之脇が演じるのは、貧相な部屋に暮らす若い夫婦、ジルとオリー。ジルは妊娠中だ。ある日、ミス・ディーと名乗る不動産仲介者から、「夢の家を差し上げます」という手紙が届く。不審に思いながらも、赤ちゃんのために理想のマイホームを手に入れたいという思いから契約を交わす。しかし、そこには夢の家を手に入れるための残酷な秘密が隠されていた。タイトルの「レディエント」は「光る、輝く」を意味し、「バーミン」は「害虫、害獣」を指す。日本初演では、オリー役を高橋一生、ジル役を吉高由里子、ミス・ディー役をキムラ緑子が務めた。
初演を見た井之脇海の衝撃
清原は、白井演出の「ジャンヌ・ダルク」(2023年)で初舞台を踏み、高い評価を得た。本作はそれ以来の舞台出演となる。作品の印象について、清原は「少ない人数で場面が次々と切り替わり、人間の欲望や感情の起伏がちりばめられていて面白かった。出演者の目線で『これを作るのは大変だろうな』と感じた」と語る。白井は初タッグとなる井之脇について、「素直でいい芝居をする」と注目している。
井之脇にとって、本作の初演は自らチケットを購入して見た初めての演劇だったという。「コメディーだから笑えるのに、ずっと『おまえはどうする』と問われている気がして、衝撃を受けた。白井さんの丁寧な演出を受けてみたいとずっと思っていた」と目を輝かせる。これに白井は、「若い2人に何かしら届いていたならうれしい。たくさん仕込んだ演劇的な仕掛けが、観客に伝わることを目指す」と応じた。
清原と井之脇が語る役柄と作品の狙い
清原はジルについて、「基本的にかわいらしく、みんなと同じように欲望もある。ダークな仕掛けがあるので、『ダメだよ』と思いながら一緒にいる感じ」と説明。井之脇は、「ジルとオリーは観客の皆さんでもある。観客の方も、実生活で欲望を満たすことを優先してしまう可能性を感じてもらえれば」と狙いを語った。互いの印象を聞かれると、清原と井之脇はそろって「真面目で誠実」と答え、笑い合った。
戯曲の特色と白井の思い
ジルとオリーが観客に向かって「皆さん—」などと頻繁に呼びかけるのも、この戯曲の大きな特色だ。白井は、「SNSでのコミュニケーションが盛んな現代だからこそ、劇場で観客の方と同じ問題を自分たちの問題として共有できることは、今、演劇にとって最も大切なこと。リドリーのたくらみをとても興味深く受け止めている」と語る。ミス・ディー役は池津祥子(56)が演じる。
公演は世田谷パブリックシアターチケットセンター(電03・5432・1515)でチケット販売中。



