礼真琴、退団後初舞台「BOOP! The Musical」で新たな一歩 ベティー・ブープに挑む
礼真琴、退団後初舞台「BOOP! The Musical」で新たな挑戦

2025年8月に16年間在籍した宝塚歌劇団を卒業した元星組トップスター、礼真琴さん。歌、ダンス、芝居の三拍子がそろった超実力派の礼さんが退団後、初舞台として挑んだのが「BOOP! The Musical」です。宝塚を卒業し、まさに羽ばたこうとする礼さんに、現在の思いを聞きました。

「BOOP! The Musical」のあらすじ

1930年代の白黒アニメ映画のスター「ベティー・ブープ」は、本当の自分とは何かを見つけるため、祖父のような存在であるグランピー博士(大澄賢也と東山義久のダブルキャスト)が発明した機械「テレポーター」を使って現代のニューヨークへ降り立ちます。ベティーはジャズミュージシャンを目指すドウェイン(松下優也と水江建太のダブルキャスト)や、ベティーに憧れを抱く少女トリーシャ(鈴木瑛美子と藤森蓮華のダブルキャスト)と出会います。いなくなったベティーを探すため、グランピー博士はベティーの相棒パジーと共にテレポーターで現代へ。40年前に恋仲だった天体物理学者ヴァレンティーナ(柚希礼音)と再会します。「ベッツィー」と名乗り、現代での生活を楽しむベティーですが――。

ベティー・ブープとは?

米国のフライシャー兄弟が1930年代に制作したアニメ映画で活躍したキャラクターで、100本以上の映画に出演。日本では1970年代にマヨネーズのCMに起用され知名度が上がり、グッズも人気を集めました。1989年に米アカデミー賞で3部門を受賞したアニメ映画「ロジャー・ラビット」にもカメオ出演しています。

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宝塚時代はいつも必死だった礼真琴さん

礼さんは多くのスターを輩出した「95期生」の首席で宝塚歌劇団に入団。広い音域から生まれる伸びやかな歌、スピード感のあるダンスなど、突出した実力の持ち主です。絶大な人気を集め、真矢ミキさん、柚希礼音さんに次いで現役タカラジェンヌとして3人目となる日本武道館でのコンサートを成功させました。16年間在籍した宝塚を振り返り、「唯一無二の大好きな場所。青春のすべてをささげた」と即答します。何でも軽々とやっているように見えた礼さんですが、「決してそんなことはない。いつも必死だった。やるしかなかった。根性はあると思います」と語ります。特に心に残っているのは退団公演の芝居「阿修羅城の瞳」だそうです。劇団☆新感線の人気作を宝塚化したことで話題となりました。「私自身、新感線さんが大好きということもあり、印象に残っています。最後の最後に強くて面白みのある二枚目ができたのがすごくうれしかった」と話します。それまではなぜか蹴られたり、ムチで打たれたりと虐げられる役が多かった礼さん。「そういうのも演じる側としては楽しくて好きなお役でした。積み重ねた結果、最後に無敵になれた。そんな気がしました」

退団後のソロコンサート「Flare」

2025年12月に開催したソロコンサート「Flare」では、J-POPのカバーが中心で、意外にも宝塚色を一切なくした内容でファンを驚かせました。「宝塚の曲を入れないというのは最初に掲げたテーマだった」と語ります。「卒業したというのを自分に分からせたかったし、卒業したからこそ、そこにすがらずに生きていきたいと思った」と礼さん。宝塚への愛は変わらず、折を見て観劇には行っているとか。「退団したことでファンのときの気持ちがよみがえりました。あのキラキラした世界はやっぱりいいなと思いますね」

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急きょ決まったBOOP!と試練

コンサートを終え、退団後初の舞台に向けて準備を進めていた礼さんに試練が訪れます。なんと、当初予定されていた舞台が諸事情で中止となってしまったのです。当時の思いを振り返ります。「衝撃でしたが、自分がというよりは、他のキャストに決まっていた皆さんが今、どう過ごしているかなという思いでいっぱいでした」関係者が東奔西走し、短期間で決まったのが「BOOP!」でした。思った以上にベティー・ブープが礼さんにぴったりのキャラクターだったため、上演決定の発表に対しSNSでは「よかった!」「待ってました!」と好意的なコメントがあふれました。礼さんも米ニューヨークに3泊5日の弾丸日程で、演出・振り付けのジェリー・ミッチェルさんに会いに行きました。「『BOOP!』だからこそ会えた方もいるので、ご縁だったのだと思います」と笑顔を見せます。また、宝塚の先輩である柚希礼音さんは、元々予定されていた舞台で礼さんが演じる役の師匠役をやるはずでした。作品や役柄が変わることになりましたが、それでも「出るよ」と言ってくれたのです。「本当に絆を感じていますし、ちえさん(柚希さん)にはお世話になりっぱなし。お稽古場でも席が隣なので分からないことは全部聞いています」

男役とは正反対のキャラ…大変さも楽しむ

セクシーでかわいらしいベティー・ブープは、礼さんが追究してきた「男役としてのかっこよさ」とは正反対のキャラクター。役作りには苦労しているそうですが、ベティーで良かったと思う部分も多いとか。「デフォルメされたキャラクターなので『やっちゃえ』みたいな感じで振り切ってやれちゃうところはあるかな。もちろんスカート姿に自分が見慣れるのも大変だし、ベティーちゃんらしい声を出すのも大変。すべてが大変ですけど、それすらちょっと楽しんでいる自分がいる」と笑顔を見せます。白黒の世界からカラフルな世界へ飛び出していくベティーと、宝塚の世界から飛び出した礼さん。やはりどこか重なるものがあります。ラストシーン、何もない舞台でスポットライトを浴びて「もっと 叫びたいの その何か」と歌うベティーに注目です。「キャラクターだったベティーちゃんが一人の人間として客席に何かを届ける。そこに礼真琴だからできる何かを乗せられたらと思いますね」。礼さんの新しい世界がどのように広がっていくのか、これからも注目していきたいと思います!

共演めちゃくちゃうれしい…柚希礼音さん(ヴァレンティーナ役)

柚希礼音さんは、「琴(礼さん)が宝塚に入る前から存在は知っていました。ファンとして手紙を私に送ってくれていたんです。『芸名にちえさん(柚希さん)の『礼』を使わせてください』と伝えてくれてうれしかったです。『お手紙をくれてた子が同じ星組に入ってきてくれた!』と思ったら、歌も踊りもうまい。その面に関しては教えることはないくらいでしたが、宝塚の伝統的な男役として大切な作法とか着こなしをみんなで色々と教えていきました。そうしたら最終的には琴独自のものが出来上がって武道館コンサートも大成功させた。涙涙で見たのを思い出します。そんなかわいい後輩の退団後一発目の作品でご一緒できるということでめちゃくちゃうれしいです。私が演じるヴァレンティーナは昔、NASAで働いていた学者の役。当時はベティーのおじいちゃん的存在のグランピーと付き合っていたのに離ればなれになってしまって。ジェリーさんから『何十年ぶりに元彼や元彼女と結婚するとかニューヨークだとよくある話だから』と聞いて、『なるほど』と。積み重ねてきた経験が見えるといいなと思います。ベティーの決断に一押しする役なのでそこもうれしいです。お楽しみに!」

ぴったり! 一番踊れるベティー…ジェリー・ミッチェルさん(演出・振り付け)

ジェリー・ミッチェルさんは、「琴(礼さん)に初めて会ったとき、『なんてチャーミング!』と思いました。ベティー・ブープというキャラクターを演じるのにぴったりだなと。琴の舞台は見たことがなかったけど宝塚の舞台は見たことがあります。あれはすごいね、芝居の後にレビューをやるじゃないですか。ハードな現場でトップスターを務めていた点もベティーにふさわしいと思いました。ただ、僕がいいと思っても作曲家が違うと思ったらできないので今作の音楽を担当しているデイビッド・フォスターに彼女が歌う動画を見てもらったんです。そうしたら『絶対行ける。祝福を送ります』と。我々が見込んだ通り、歌もダンスもめちゃくちゃうまい。この作品は僕がこれまで関わってきた中でも最もダンスが多くて振り付けも難しいんだけど、琴は間違いなく一番踊れるベティーです。とても賢くてユーモアのセンスもあるよね。気合を入れるため『ラー』と叫ぶ僕のものまねを琴がやってたんだけど、それもうまくて笑っちゃったよ。ものすごく真面目なんだけど面白いところもあって、僕にインスピレーションを与えてくれる存在ですね。彼女の持つ喜びと無垢な美しさはこの作品の鍵となるはず。感謝しています!」

愛犬さぶろーは今も支え

「宝塚時代からいっぱい支えてもらったペットのさぶろー。今もとっても元気です。東京に来てから車に乗るより歩いて移動することが増えたのですが、さぶろーの散歩で40分くらい歩くのはざら。ここにこんなお店があるんだと発見するのが楽しいですし、さぶろーがいるとどこまでも歩ける気がします」

公演情報

宝塚退団後の初舞台「BOOP! The Musical」は、脚本:ボブ・マーティン、音楽:デイビッド・フォスター、作詞:スーザン・バーケンヘッド。東京・渋谷の東急シアターオーブで6月21日まで、大阪・梅田芸術劇場で7月4日~22日、福岡・博多座で7月30日~8月16日。(文・読売新聞文化部 小間井藍子/写真・野口哲司)

プロフィル

礼真琴(れい・まこと) 12月2日生まれ、東京都出身。O型。身長1メートル70。2009年、宝塚歌劇団に首席で入団し、星組に配属。19年、星組トップスターに就任。25年8月10日、星組公演「阿修羅城の瞳/エスペラント!」で宝塚を退団。最近の趣味はネイル。「始めたが最後、途中でやめられないことに気づきました(笑)。続けるしかない。恐ろしいと思いつつ、手先がきれいだと気分がいいです」

柚希礼音(ゆずき・れおん) 6月11日生まれ、大阪府出身。B型。身長1メートル72。1999年、宝塚歌劇団に入団し、星組に配属。2009年、星組トップスターに就任。15年5月10日、星組公演「黒豹の如く/Dear DIAMOND!!」で宝塚を退団後は舞台を中心に活躍。

Jerry Mitchell(ジェリー・ミッチェル) 米国の振付家・演出家。1980年代からダンサーとしてブロードウェーの舞台に立ち、振付家としても頭角を現す。その後、演出家としても活躍。代表作に「キンキーブーツ」「ヘアスプレー」「キューティ・ブロンド」など。米トニー賞の最優秀振り付け賞を2回(ラ・カージュ・オ・フォール、キンキーブーツ)受賞。最近の息抜きは米国で大人気のドラマ「ヒーテッド・ライバルリー」の原作小説を読み、人気の理由を探ること。